失点後に声が止まるチームに、何が起きているのか

試合中、本当に声が必要な場面があります。

失点した直後。
大事な試合でミスが出た直後。
流れが相手に傾き始めた時。

本来なら、そこで声が出てほしい。

「大丈夫」
「落ち着こう」
「まだ時間ある」
「切り替えよう」

そんな声が出れば、チームはもう一度戻りやすくなります。

ところが実際の現場では、逆のことがよく起こります。

失点した瞬間に、声が止まる。
ミスをした選手が下を向く。
周りの選手も何を言っていいか分からなくなる。
時には、仲間を責めるような声が出てしまう。

指導者としては、思わず言いたくなります。

「声を出せ」
「切り替えろ」
「下を向くな」

でも、そこで考えたいことがあります。

なぜ、選手は声を出せないのでしょうか。

失点後、選手の心の中では何が起きているのか

私は選手たちに、よく「心のコップ」の話をします。

心の中にコップがあるとします。
その中には、安心の水と不安の水が入っています。

安心の水が多い時、選手は周りが見えます。
判断もしやすい。
仲間の声も届きやすい。
思い切ってプレーもしやすい。

一方、不安の水が増えるとどうなるか。

視野が狭くなります。
判断が遅れます。
身体が固くなります。
仲間の声も届きにくくなります。

失点直後は、この不安の水が一気に増えやすい場面です。

その時、選手の頭の中では、こんな言葉が流れています。

「やばい」
「まじか」
「早く取り返さなきゃ」
「負けるかもしれない」

実は、選手は失点そのものだけで崩れているのではありません。

失点した後に、自分の中でどんな言葉をつぶやいているか。
その言葉によって、さらに崩れていくことがあります。

指導者の声が、不安の水を増やすこともある

ここで難しいのが、指導者の言葉です。

指導者は、選手を立て直したいと思っています。
チームを引き締めたいと思っています。
だから、強い言葉をかけることがあります。

「何やってるんだ」
「集中しろ」
「だから言っただろ」

もちろん、言いたくなる気持ちは分かります。

ただ、その言葉が選手の安心の水を増やすのか。
それとも、不安の水を増やすのか。

ここは一度、立ち止まって考える必要があります。

選手がすでに不安でいっぱいになっている時、さらに責められると、頭の中の言葉はこう変わります。

「やっぱり自分はダメなんだ」
「また怒られた」
「もう絶対にミスできない」

これでは、声は出にくくなりますし
プレーも委縮します。

大事なのは、声を出させることではない

「声を出せ」と言えば、声が出るわけではありません。

大事なのは、選手自身が気づくことです。

どんな場面で、自分たちは声が止まりやすいのか。
その時、頭の中でどんな言葉が流れているのか。
どんな声があると、もう一度戻れるのか。

あるチームでは、失点後に崩れやすいという課題がありました。

そこで選手たちに、失点した後に頭の中で流れている言葉を付箋に書いてもらいました。

「やばい」
「まじか」
「取り返さなきゃ」
「負けるかも」

いろいろな言葉が出てきました。

次に、こう問いかけました。

「この言葉を、どんな言葉に変えたら安心の水が増えるだろう」

選手たちは考えました。

「大丈夫」
「まだ時間ある」
「一回落ち着こう」
「次のプレーに集中しよう」
「みんなで取り返そう」

指導者が正解を教えたわけではありません。
選手自身が、自分たちを戻す言葉を考えたのです。

ここが大事です。

指導者が声を出させるのではなく、選手たちが自分たちを戻す声を見つける。
それが、チームの力になります。

失点しても、崩れ方は変えられる

失点しないチームはありません。
ミスをしない選手もいません。

だから本当に大事なのは、崩れないことではありません。

崩れても戻れることです。

失点した後に、下を向き続けるのか。
仲間を責めるのか。
沈黙するのか。

それとも、もう一度声をかけ合い、次のプレーに戻っていくのか。

この違いは、日頃の関わり方で変わります。

安心の水を増やす声。
基準を下げずに、選手を戻す声。
失敗しても存在を否定しない関係性。

そうした積み重ねが、失点後に強いチームをつくります。

指導者が明日からできる小さな実験

まずは、選手に声を出させる前に、観察してみてください。

自分のチームは、どんな場面で声が止まるのか。
その時、選手はどんな表情をしているのか。
指導者である自分は、どんな言葉をかけているのか。

そして、次に選手たちに問いかけてみてください。

「失点した後、頭の中でどんな言葉が流れている?」
「その時、どんな声があったら戻りやすい?」
「自分たちで決めるなら、どんな声を大事にしたい?」

この問いだけでも、チームの空気は少し変わります。

声は、気合いで出すものではありません。
声は、安心と基準の中から生まれるものです。

選手が崩れた時に戻れるチームをつくる。
そのために、指導者ができることはたくさんあります。

まずは、選手の不安の水を増やしていないか。
そこを観察することから始めてみてください。

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