サッカーノートというと、技術や戦術の振り返りを書くものだと思われることがあります。
もちろん、それも大切です。
今日うまくいったプレー。
次に直したいプレー。
ポジションや判断の反省。
こうしたことを書くことで、プレーは整理されます。
ただ、メンタルの視点で見ると、サッカーノートにはもう一つ大切な役割があります。
それは、自分への見方を育てることです。
少し難しく言えば、セルフイメージを整えること。
もっと簡単に言えば、
「自分はミスしたら終わりだ」
ではなく、
「自分はミスしても戻れる」
と思える自分を、少しずつ育てていくことです。
ミスの後に出る言葉は、日頃の自分への見方から生まれる
試合中にミスをした瞬間、選手の頭にはいろいろな言葉が浮かびます。
「やばい」
「まただ」
「自分のせいだ」
「もうミスできない」
こうした言葉は、ゆっくり考えて出しているわけではありません。
パッと出てきます。
これを、自動思考と言います。
自動思考は、その選手が普段から自分をどう見ているかとつながっています。
「自分は大事な場面で弱い」と思っている選手は、ミスの後に「またやった」と思いやすい。
「自分は一度崩れると戻れない」と思っている選手は、ミスの後に「今日はもうダメだ」と感じやすい。
反対に、
「ミスしても戻れる」
という自分への見方が育っている選手は、同じミスの後でも少し違う言葉が出やすくなります。
「顔を上げよう」
「次の守備」
「まず一つ」
この小さな言葉の違いが、次の行動を変えます。
サッカーノートは、この自動思考を少しずつ変えていくための道具になります。
ノートは反省帳ではなく、戻れた証拠を集める場所
小学生や中学生にサッカーノートを書かせる時、気をつけたいことがあります。
それは、ノートを反省帳にしすぎないことです。
「今日できなかったこと」
「悪かったこと」
「直すこと」
これだけが続くと、ノートを書くたびに自己否定が強くなることがあります。
真面目な子ほど、どんどん自分を責めてしまいます。
サッカーノートで大切にしたいのは、できなかったことだけではありません。
それでも戻れた場面を書くことです。
ミスをした。
でも顔を上げた。
注意された。
でも次のプレーで声を出した。
うまくいかなかった。
でも最後まで走った。
こういう小さな記録が残ると、選手の中に証拠が増えていきます。
「自分はミスしても戻れる時がある」
この証拠が、セルフイメージを少しずつ変えていきます。
小学生でも書ける、メンタル用サッカーノート
では、実際に何を書けばいいのか。
私は、最初はたくさん書かなくていいと思っています。
毎日3分で大丈夫です。
小学生なら一言でもいいです。
中学生なら少しだけ理由を書ければ十分です。
おすすめは、次の5つです。
1. 今日、心が動いた場面
まず、今日の練習や試合で心が動いた場面を一つ書きます。
ミスをした場面。
注意された場面。
うまくいった場面。
悔しかった場面。
うれしかった場面。
何でも構いません。
大事なのは、心が動いた場面を一つ選ぶことです。
たとえば、
「パスミスをして、少しあせった」
「シュートを外して、くやしかった」
「コーチに注意されて、下を向いた」
このくらいです。
2. その時、頭に浮かんだ言葉
次に、その時に頭に浮かんだ言葉を書きます。
ここがとても大切です。
「やばい」
「またミスした」
「怒られるかも」
「今日はダメかも」
きれいな言葉でなくていいです。
本当に浮かんだ言葉を書きます。
これを書くことで、自分の自動思考が見えてきます。
見えるようになると、少し距離を取れるようになります。
「あ、自分はミスの後に“まただ”と思いやすいんだな」
そう気づけるだけでも、大きな一歩です。
3. 体に出たサイン
心が動いた時、体にもサインが出ます。
肩に力が入る。
呼吸が浅くなる。
下を見る。
足が止まる。
声が出なくなる。
小学生なら、「からだはどうなった?」と聞くとわかりやすいです。
体のサインに気づけると、試合中に早く戻りやすくなります。
「今、肩に力が入っている。ちょっと呼吸しよう」
こう思えるからです。
4. 次に戻るための言葉
ここで、戻る言葉を書きます。
長い言葉はいりません。
「次」
「顔を上げる」
「一回呼吸」
「まず守備」
「もう一回受ける」
短い方が、本番で使えます。
ポイントは、無理やり前向きな言葉にしないことです。
「絶対できる」と言われても、心がついてこない時があります。
それよりも、
「顔を上げる」
のように、次の行動につながる言葉の方が使いやすいです。
5. 今日の戻れた証拠
最後に、今日の中で少しでも戻れた場面を書きます。
ここが、セルフイメージを育てる一番大事なところです。
たとえば、
「ミスの後、次の守備に戻れた」
「注意された後、下を向いたけど声は出せた」
「シュートを外したけど、もう一回打てた」
大きな成功でなくていいです。
小さな証拠で十分です。
ノートの最後が「自分はダメだった」で終わるのか。
「でも少し戻れた」で終わるのか。
この違いは、次の日の自分への見方に影響します。
記入例
たとえば、小学生ならこんな感じです。
今日の場面:パスミスをした。
頭の中の言葉:やばい。
体のサイン:下を見た。
戻る言葉:顔を上げる。
戻れた証拠:次の守備は走れた。
中学生なら、少しだけ詳しく書けます。
今日の場面:紅白戦でパスを引っかけてカウンターを受けた。
頭の中の言葉:またやった。怒られるかもと思った。
体のサイン:肩に力が入って、周りを見るのが遅れた。
戻る言葉:まず守備。
戻れた証拠:その後の守備で一回インターセプトできた。
これでOKです。
毎回きれいに書く必要はありません。
字が少し曲がっていても、心が少し真っ直ぐになれば、それでいいと思います。
なぜノートを書くとセルフイメージが変わるのか
人は、自分の記憶をもとに、自分への見方を作っています。
ミスした記憶ばかりが残ると、
「自分はミスが多い選手だ」
と思いやすくなります。
怒られた記憶ばかりが残ると、
「自分は責められる選手だ」
と思いやすくなります。
でも、ノートに「戻れた証拠」を残しておくと、違う記憶も残ります。
ミスしたけど戻れた。
落ち込んだけど声を出せた。
下を向いたけど、次は顔を上げられた。
この記録が増えると、自分への見方が少し変わります。
「自分はミスしたら終わり」ではなく、
「自分はミスしても戻れる」へ。
この見方が育つと、本番で浮かぶ言葉も変わっていきます。
自分への見方が変わる。
頭に浮かぶ言葉が変わる。
次の行動が変わる。
この流れが、リバウンドメンタリティーを育てていきます。
指導者や保護者ができる関わり
大人ができることは
「ちゃんと書けているか」よりも、「自分を見つめる時間になっているか」を見たいところです。
書いた内容に対しても、すぐに正解を教えなくていいと思います。
「そこはこう考えなさい」と言うより、
「次はどんな言葉で戻れそう?」
「今日、少し戻れたところはどこだった?」
このくらいの問いで十分です。
特に大事なのは、戻れた証拠を一緒に見つけてあげることです。
子どもは、自分のできなかったことにはよく気づきます。
でも、戻れた場面には気づかないことがあります。
そこを大人が見つけてあげる。
「ミスしたけど、次の守備は走っていたね」
「注意された後、声を出していたね」
「下を向いたけど、すぐ顔を上げたね」
こういう観察が、選手の中に残っていきます。
まずは一週間、短く書いてみる
サッカーノートは、長く書こうとすると続きません。
最初は一週間だけでいいと思います。
書くことは五つ。
今日、心が動いた場面。
その時、頭に浮かんだ言葉。
体に出たサイン。
次に戻るための言葉。
今日の戻れた証拠。
大切なのは、完璧に書くことではありません。
自分の中で何が起きていたかに気づくこと。
そして、ミスしても戻れた証拠を少しずつ残すことです。
失敗しない選手を育てるのではなく、失敗しても戻れる選手を育てる。
そのために、サッカーノートはとても使いやすい道具になります。
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