「切り替えろ」だけでは切り替えられない理由

試合中、ミスをした選手に対して「切り替えろ」と声をかけることがあります。

私も、その言葉自体が悪いとは思いません。

ただ、選手の中に「どう切り替えるか」がなければ、その言葉はうまく届かないことがあります。

本番中は、ゆっくり考える余裕がありません。

だからこそ、自分を今やることに戻す短い言葉を、あらかじめ持っておくことが大切になります。

試合中にミスをした瞬間、選手の頭の中にはいろいろな言葉が出ます。

「やばい」
「まじか」
「どうしよう」

この状態で、外から「切り替えろ」と言われても、すぐに切り替えられるとは限りません。

切り替えたい気持ちはある。
でも、頭の中では不安の言葉が回っている。

この時に必要なのが、戻る言葉です。

戻る言葉とは、パニックの中で自分を今やることへ戻す短い合図です。

長い言葉である必要はありません。

むしろ、短い方がいいと思います。

大切なのは、無理やり前向きになる言葉ではないということです。

「絶対大丈夫」
「自分ならできる」
「気にするな」

こうした言葉で戻れる選手もいます。

戻る言葉は、心を一気に元気にする魔法の言葉ではありません。

次の一歩を思い出すための合図です。

では、その言葉をどう見つければいいのでしょうか。

私は、選手にこう聞くことがあります。

「もし親友が、自分と同じ状況にいたら、どんな声をかける?」

この問いは、とても有効です。

人は、自分には厳しい言葉をかけやすいものです。

「何やってるんだ」
「またか」
「ダメだな」

でも、親友が同じようにミスをして落ち込んでいたら、そんな言い方をするでしょうか。

多くの選手は、きっと違う言葉をかけます。

「大丈夫。次いこう」
「まだ終わってない」
「一回落ち着こう」

その言葉は、自分にも向けていい言葉です。

ここが大切です。

戻る言葉は、誰かに決めてもらうものではありません。

だから、大人の役割は、正解を教えることより、選手自身が自分にかけられる言葉を見つける手助けをすることだと思います。

本番中は、考える時間が短い。

だからこそ、日頃から準備しておく必要があります。

ミスをしたら、自分はどんな言葉に飲まれやすいのか。
その時、どんな言葉なら今やることに戻れそうか。

ここを日頃確認しておくといいと思います。

それだけでも、本番での戻り方は変わってきます。

最後のまとめ

「切り替えろ」という声かけは、悪い言葉ではありません。

ただ、選手の中に戻る言葉がなければ、心のコップは不安の水でいっぱいかもしれません。

本番中に必要なのは、安心の水が増える言葉です。

その言葉は、親友にかけるような言葉であってほしいと思います。

あなたなら、親友がミスの後に落ち込んでいたら、どんな言葉をかけますか。

その言葉を、自分にも向けられるでしょうか。

次回は、その戻る言葉が本番で自然に出てくるために、日常でどんな小さな行動を積み重ねるとよいのかを考えます。

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