試合の序盤に一つミスをする。
その後、いつも通りプレーできなくなる選手がいます。
外から見ると、「切り替えが遅い」「気持ちが弱い」「もっと堂々とやればいい」と見えるかもしれません。
でも、選手の内側では、もう少し複雑なことが起きています。
ミスそのものよりも、ミスの後に頭の中で回り始める言葉が、次のプレーに影響していることがあります。
ある選手が、試合序盤のミスをきっかけに、頭の中で「やばい、やばい」という言葉が回り続けて、頭が真っ白になった。と話してくれたことがあります。
一つのミス。
でも、その後の頭の中では、何度も同じ言葉が流れている。
「またやった」
「次も失敗したらどうしよう」
「見られている」
「怒られるかもしれない」
こうした言葉は、考えようとして考えているというより、パッと浮かんできます。
心理学では、これを自動思考と言います。
少し難しく聞こえますが、簡単に言えば、出来事が起きた瞬間に頭の中で勝手に流れるひとり言です。
このひとり言が強くなると、不安の水位が一気に上がります。
不安が30%くらいなら、まだ周りを見る余裕があります。
でも、90%や100%に近づくと、考える余裕がほとんどなくなります。
本当はボールを受けられる場面でも、受けるのが怖くなる。
本当は味方に声をかけられる場面でも、声が出ない。
本当は次のプレーに行けるはずなのに、さっきのミスの映像が頭の中で流れ続ける。
これは、能力がないからではありません。
根性が足りないからでもありません。
頭の中の言葉と、不安の水位の問題として見ることもできるのです。
もちろん、技術的なミスの修正は必要です。
トラップの置き所。
判断のタイミング。
身体の向き。
準備の質。
そこを振り返ることは大切です。
ただ、ミスの後に急にプレーが小さくなる選手に対して、技術だけを見ていると、本当の原因を見落とすことがあります。
その選手は、次のプレーの前に、もう頭の中で自分を責めているかもしれません。
「やばい」
「まただ」
「自分のせいだ」
この言葉に飲まれたままプレーに戻るのは、大人が思っている以上に難しいものです。
指導者や保護者ができる最初の一歩は、ミスそのものだけを見ないことだと思います。
なぜミスしたのか。
それも大切です。
でも同時に、ミスの後、その選手の中で何が起きていたのか。
そこにも目を向けたいのです。
選手がミスをした後に下を向いた。
声が出なくなった。
急に安全なプレーばかりになった。
動きが半歩遅れた。
その時、単に「切り替えろ」と言うだけでは届きにくいことがあります。
選手の中では、すでに不安の水位が上がっているからです。
必要なのは、まず気づくことです。
「今、頭の中でどんな言葉が出ていた?」
「ミスの後、何が一番気になった?」
「その時、不安はどれくらい大きくなっていた?」
こうした問いは、選手を責めるためのものではありません。
自分の中で起きていることに気づくための問いです。
気づけるようになると、少し余裕が生まれます。
「あ、今、自分はやばいと思っていたんだ」
「今、周りの目を気にしていたんだ」
「だから次のプレーが小さくなったんだ」
ここまで見えると、次に戻る準備ができます。
リバウンドメンタリティーとは
ミスをした後に、自分の中で何が起きているかに気づき、次の行動へ戻っていく力です。
そのためには、まず選手の頭の中の言葉を見ることから始まります。
指導者・保護者が使える問い
ミスの後にすぐアドバイスする前に、こう聞いてみてもいいかもしれません。
「今の後、頭の中でどんな言葉が出ていた?」
この一問だけでも、選手は自分の内側に目を向けやすくなります。
最後のまとめ
ミスの後に崩れる選手を、弱い選手と決めつけなくていいと思います。
もしかしたら、その選手はミスそのものではなく、ミスの後に頭の中で回り続ける言葉に苦しんでいるのかもしれません。
ミスを見たら、プレーだけでなく、その後の表情、声、身体の硬さ、次の行動も見てみる。
そこに、戻る力を育てる入口があります。
選手がミスした後、あなたはプレーだけを見ていますか。
それとも、選手の頭の中で回っている言葉にも目を向けていますか。
次回は、ミスの後に自分をプレーへ戻すための「戻る言葉」について考えていきます。
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