選手の主体性を引き出すコーチングメソッド

■セッションのビフォー:停滞感と後悔

今回取り上げるのは、とある大学サッカー選手とのセッション事例です。
シーズン序盤に怪我を負い、満足な出場機会を得られなかった彼は「やれることをやっていなかった」と振り返っていました。目標に掲げた「二桁得点」も叶わず、練習へのモチベーションも揺らいでいたのです。

この段階の彼のマインドは「怪我がなければ…」「もっとやっておけば…」と過去への後悔に傾き、主体性を発揮できていませんでした。


■セッションのアフター:未来から逆算する思考

セッションの中で取り組んだのは、「未来の理想の自分」から現在を振り返るコーチングです。

  • 1年後の理想像を描く:試合で10得点を挙げ、チームを優勝に導く自分。
  • 未来からのメッセージ:「あと1年しかない。もったいないぞ!」という声を今の自分に届ける。
  • 具体行動に落とし込む
    1. 怪我予防のためのルーティン徹底(風呂上がりストレッチ、練習前30分の体幹トレ)
    2. チャレンジ精神の継続(失敗を恐れずに仕掛ける)
    3. ゴール前の自主練(クロスの入り方、シュート精度の強化)
    4. チームへの貢献意識(声かけや練習の雰囲気づくり)

こうした整理を経て、彼は「やれることを全然やっていなかった」と気づき、残りのシーズンを“未来の理想像に近づく実験期間”として再定義することができました。


■マインドの変化:失敗恐怖からチャレンジ志向へ

特に大きな変化は「失敗を恐れる姿勢」から「失敗してもチャレンジする姿勢」への転換でした。
コーチングによって“未来の映像をありありと描く”ことで、自然と「そのために必要な行動」を自分で導き出すことができたのです。

このプロセスを通じて、受け身だった彼は「未来のために今やれることを選び取る主体的な選手」へと変わっていきました。


■指導者への示唆:再現性のあるコーチングロジック

このケースは、どのチームでも応用できるシンプルなロジックに基づいています。

  1. 未来から逆算する質問
    • 「1年後、どんな自分でありたい?」
    • 「その理想の自分から、今の自分に何と声をかける?」
  2. 理想像と現在地のギャップを特定
    • 能力面(体幹・筋力)
    • 行動面(ルーティン、練習態度)
    • チーム貢献(声かけ、雰囲気づくり)
  3. ギャップを埋める行動を選手自身に言語化させる
    • コーチが教えるのではなく、選手が「やる」と決める。

この流れを押さえることで、指導者は選手の主体性を自然に引き出すことができます。


■まとめ

コーチングのゴールは「選手を変えること」ではなく「選手が自ら変わろうとする力を引き出すこと」です。
未来の理想像から逆算するプロセスは、その力を呼び起こす非常に効果的な手法です。

試合に出られず苦しんでいた選手が「未来を起点に考える」ことで主体性を取り戻したように、私たち指導者も「問い」と「未来の映像化」を武器に、選手の内なる力を引き出していきましょう。

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