伸びる選手は、頭の中の言葉が変わっている

この半年間、複数のサッカー選手と継続的に個人メンタルコーチングを行ってきました。

選手によって課題は違います。

周囲の評価が気になり、プレーが小さくなる選手。
ミスをすると、ネガティブな気持ちに飲まれやすい選手。
失点や失敗を引きずり、周囲の目が気になって窮屈になる選手。
指摘や批判を受けると、自信を失いやすい選手。
人間関係の中で萎縮し、チームの中で自分の場所を作ることに苦しむ選手。

悩みの形はそれぞれ違います。

でも、継続して話を聴いていく中で、伸びていく選手には共通点があると感じるようになりました。

それは、技術や努力量だけではありません。

自分への見方が変わっている。

もう少し具体的に言えば、

「自分はどんな選手なのか」

というセルフイメージが変わり、その結果として、試合中に頭の中に出てくる言葉が変わっているのです。

セルフイメージが変わると、自動思考が変わる

サッカーでは、ミスをした時や評価されなかった時に、頭の中にいろいろな言葉が浮かびます。

「またやった」
「自分はダメだ」
「怒られるかもしれない」
「もうミスできない」
「やっぱり自分は通用しない」

こうした言葉は、こちらが考えようとして出しているというより、勝手に浮かんでくることが多いものです。

心理学では、これを「自動思考」と呼びます。

少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、出来事が起きた瞬間に頭の中で流れるひとり言です。

この自動思考が、次のプレーに大きく影響します。

たとえばミスをした後に、

「自分はダメだ」
「次も失敗するかもしれない」

という言葉が強くなると、次の行動は小さくなりやすくなります。

ボールを受けるのが怖くなる。
判断が遅れる。
声が出にくくなる。
安全なプレーばかりを選ぶ。
身体が硬くなる。

逆に、

「今のはミス。次に戻ろう」
「まず顔を上げよう」
「次の一つに集中しよう」

という言葉が出てくると、次の行動は変わります。

もう一度ボールを受ける。
守備のポジションを取る。
味方に声をかける。
相手とスペースを見る。
次のプレーに入る。

同じミスでも、その後に頭の中でどんな言葉が出るかによって、次の行動は変わります。

そして、この自動思考に大きく影響しているのが、セルフイメージです。

「自分はミスをすると崩れる選手だ」

と思っている選手は、ミスをした瞬間に、

「また崩れるかもしれない」
「今日もダメかもしれない」

という言葉が出やすくなります。

一方で、

「自分はミスをしても戻れる選手だ」

というセルフイメージが育ってくると、同じミスの後でも、

「大丈夫。次に戻ろう」
「まず今できることをやろう」

という言葉が出やすくなります。

セルフイメージが変わると、自動思考が変わる。
自動思考が変わると、感情、身体、判断、行動が変わる。
だから、プレーが変わる。

ここが、とても大切なポイントです。

「評価される選手」から「チームに関わる選手」へ

ある選手は、周囲からどう見られるかをとても気にしていました。

監督に評価されるか。
仲間にどう思われるか。
ミスをしたら何を言われるか。

そうした意識が強くなるほど、プレーは小さくなります。

自動思考としては、

「失敗したら評価が下がる」
「変なプレーはできない」
「周りにどう見られるだろう」

という言葉が出やすくなります。

その結果、安全な選択が増え、思い切ったプレーが減っていく。

セッションでは、評価を気にしない選手になろうとしたわけではありません。

評価が気になるのは自然です。

大切なのは、評価が気になった時に、何に戻るかです。

少しずつ、その選手のセルフイメージは変わっていきました。

「評価されるためにプレーする選手」から、
「チームの勝利に関わる選手」へ。

すると、頭の中の言葉も変わっていきます。

「どう見られるか」から、
「今、チームのために何ができるか」へ。

「ミスしたらどうしよう」から、
「この場面で自分が関われることは何か」へ。

自動思考が変わると、次の行動が変わります。

声を出す。
ボールを受ける。
守備で戻る。
味方を助ける。
チームの流れに関わる。

この変化が、プレーの変化につながっていきます。

「ネガティブにならない選手」ではなく「戻れる選手」へ

別の選手は、ミスや不安に飲まれやすい状態でした。

ミスをすると、

「今日はダメだ」
「自分はダメだ」
「またやってしまった」

と考えやすい。

この自動思考が強くなると、プレーは小さくなります。

でも、メンタルコーチングで目指すのは、ネガティブにならない選手になることではありません。

ネガティブな感情が出るのは自然です。

悔しい。
焦る。
不安になる。
落ち込む。

本気でサッカーに向き合っているからこそ、そういう感情も出てきます。

大切なのは、ネガティブにならないことではなく、ネガティブになっても戻れることです。

瞑想や振り返り、日常の習慣改善を続ける中で、その選手は少しずつ変わっていきました。

「自分はすぐネガティブになる選手だ」

という見方から、

「自分はネガティブになっても戻れる選手だ」

という見方へ。

このセルフイメージが育つと、頭の中の言葉も変わります。

「もうダメだ」ではなく、
「ミスは誰にでもある」へ。

「またやった」ではなく、
「次のプレー」へ。

この小さな言葉の変化が、次の行動を変えていきます。

「見られている不安」から「準備で自信を作る」へ

あるGKは、失点や失敗を引きずりやすい状態でした。

コーチにどう見られているか。
周囲にどう評価されているか。
ミスをしたらどう思われるか。

GKは、特にミスが目立つポジションです。

一つの判断。
一つのキャッチ。
一つの声。
一つの失点。

それが、自分への評価と結びつきやすい。

自動思考としては、

「見られている」
「また何か言われるかもしれない」
「失点したら終わりだ」

という言葉が出やすくなります。

その言葉が強くなると、プレーは窮屈になります。

でも、少しずつ意識が変わっていきました。

「見られている不安に反応するGK」から、
「準備で自信を作るGK」へ。

睡眠を整える。
食事を意識する。
部屋を整理する。
練習前の準備をする。
優先順位を決める。

こうした日常の行動が、少しずつセルフイメージを変えていきます。

「自分は不安に振り回されるGKだ」ではなく、
「自分は準備で状態を作れるGKだ」

そう思える証拠を、日々の中で積み上げていく。

すると、試合中の自動思考も変わっていきます。

「どう見られるだろう」から、
「自分は準備してきたから大丈夫」へ。

この変化が、次のプレーの落ち着きにつながっていきます。

「責められる側」から「声で自分の場所を作る選手」へ

人間関係の中で萎縮していた選手もいました。

見下されているように感じる。
責められているように感じる。
チームの中で自分の居場所がないように感じる。

そうなると、プレーだけでなく声も小さくなります。

頭の中では、

「自分が言っても意味がない」
「また責められるかもしれない」
「どうせ見下される」

という言葉が出やすくなります。

その言葉が出ると、関わることを避けたくなります。

でも、この選手にとって大きかったのは、声を出すことでした。

声を出すことは、ただの技術ではありません。

自分を守ることでもあります。
チームに関わることでもあります。
自分の存在を、ピッチの中に置き直すことでもあります。

少しずつ、

「自分は責められる側だ」

というセルフイメージから、

「自分は声を出して、自分の場所を作れる選手だ」

というセルフイメージへ変わっていく。

すると、自動思考も変わります。

「言っても無駄だ」から、
「声を出してみよう」へ。

「責められるかもしれない」から、
「自分もチームに関われる」へ。

その言葉の変化が、実際の声や行動につながっていきます。

セルフイメージは、行動の証拠で変わる

ここで大切なのは、セルフイメージは言葉だけでは変わらないということです。

「自信を持て」
「前向きに考えろ」
「自分ならできると思え」

そう言われても、すぐに変わるわけではありません。

自分への見方は、日々の小さな行動によって変わります。

ミスをした後に、もう一度ボールを受けた。
不安だったけれど、練習前に準備を整えた。
落ち込んだけれど、振り返りを書いた。
評価が気になったけれど、チームのために声を出した。
完璧ではなかったけれど、最後までやり切った。

こうした一つひとつの行動が、

「自分は戻れる」
「自分は選び直せる」
「自分はチームに関われる」

という証拠になります。

その証拠が増えると、セルフイメージが変わります。

セルフイメージが変わると、次に同じような場面が来た時の自動思考が変わります。

そして、自動思考が変わると、次のプレーが変わります。

この流れが、選手の成長を支えているのだと思います。

振り返りは、セルフイメージを更新する時間

だから私は、振り返りをとても大切にしています。

ただし、振り返りは反省会ではありません。

もちろん、改善点を見ることは大切です。
課題を整理することも必要です。

でも、それだけでは選手は苦しくなることがあります。

「またできなかった」
「また同じことをした」
「自分は変われていない」

そう感じてしまうからです。

振り返りで大切なのは、できなかったことだけを見るのではなく、

「それでも戻れた場面はどこか」
「小さくても前に進んだ行動は何か」
「以前より少し変わったところは何か」
「自分で選べた一歩は何か」

を見つけることです。

これは甘やかしではありません。

セルフイメージを更新するための証拠集めです。

ミスをした。
でも、次のプレーで顔を上げた。

不安になった。
でも、練習前に呼吸を整えた。

落ち込んだ。
でも、振り返りを書いた。

評価が気になった。
でも、チームのために声を出した。

こうした小さな証拠が、選手の自動思考を少しずつ変えていきます。

“戻れる自分”の証拠を集める

これから、この考え方をもっと使いやすい形にしていきたいと思っています。

たとえば、

「戻れる自分ノート」

のようなものです。

今日、崩れた場面はどこだったか。
その時、どんな感情が出たか。
頭の中にどんな言葉が出たか。
それでも戻れた行動は何だったか。
次に同じ場面が来たら、どうするか。

こうしたことを短く書き残していく。

将来的には、選手がスマホで簡単に振り返れるような小さな仕組みにしても面白いかもしれません。

大事なのは、選手が自分で自分の変化に気づけることです。

指導者やコーチが「成長しているよ」と伝えることも大切です。

でも、最終的には選手自身が、

「自分は少しずつ戻れるようになっている」
「自分は不完全でも前に進めている」
「自分はチームに関われる」

と感じられること。

その実感が、次の試合での頭の中の言葉を変えていきます。

伸びる選手は、頭の中の言葉が変わっている

選手が変わる時、ただ技術が伸びるだけではありません。

自分自身への見方が変わっています。

そして、自分への見方が変わることで、ミスや不安や評価に対する自動思考が変わっています。

評価されないと価値がない自分から、チームに関われる自分へ。
ミスをすると崩れる自分から、ミスをしても戻れる自分へ。
見られている不安に反応する自分から、準備で自信を作れる自分へ。
責められる側の自分から、声で自分の場所を作れる自分へ。

こうしたセルフイメージの変化が、頭の中の言葉を変えます。

頭の中の言葉が変わると、次の行動が変わります。

そして、その行動の積み重ねが、プレーを変えていきます。

振り返りとは、できなかったことを責める時間ではありません。

今日の中に、「それでも戻れた自分」の証拠を見つける時間です。

明日からできる一歩は、とてもシンプルです。

練習後に書いてみる。

「今日は、どこで少し戻れたか」

その小さな記録が、自分への見方を少しずつ変えていきます。

そして、その変化が、次のプレー、次の練習、次の試合を変えていくのだと思います。

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