声を出せ、ではなく、仲間が戻れる声を育てる

小学生サッカーチームで見えた「声の質」の大切さ

サッカーの現場では、よくこんな言葉を聞きます。

「声を出せ」

とても大切な言葉です。

声が出ていないチームは、情報が共有されにくい。
雰囲気も重くなりやすい。
仲間同士の関わりも少なくなります。

だから、声を出すこと自体は大切です。

ただ、最近ある小学生サッカークラブの選手と保護者向けにオンラインセミナーを行う中で、改めて感じたことがあります。

本当に大切なのは、声の大きさだけではない。

どんな声をかけるか。

つまり、声の質です。

子どもたちが言われて嬉しい言葉

セミナーでは、子どもたちにこんなことを考えてもらいました。

ミスした時に、どんな言葉をかけられるとうれしいか。
自信をなくしている仲間に、どんな言葉をかけたいか。

子どもたちからは、こんな言葉が出てきました。

「どんまい」
「切り替えて」
「次いこう」
「大丈夫」
「ナイス」

どれも、サッカーの現場ではよく聞く言葉です。

でも、改めて考えてみると、これらは単なる慰めではありません。

ミスした選手を、次のプレーへ意識を戻す言葉です。

「どんまい」は、ミスでへこまらなくていいという合図になる。
「次いこう」は、意識を次のプレーへ向けてくれる。
「ナイスチャレンジ」は、挑戦したことを認めてくれる。

短い言葉でも、選手の心の状態を変えることがあります。

声には、不安を増やす声と安心を増やす声がある

前回のセミナーでは、心の中に「不安の水」と「安心の水」があるという話をしました。

ミスをした時、失点した時、仲間に強く言われた時。

子どもの心のコップには、不安の水が増えやすくなります。

その時に、

「何やってるんだ」
「ちゃんとやれよ」
「またかよ」

と言われたらどうでしょうか。

もちろん、言った側に悪気がないと思います。

試合に勝ちたい。
仲間にもっと頑張ってほしい。
チームをよくしたい。

その気持ちから、強い言葉が出ることもあります。

でも、受け取る側の心のコップには、不安の水が増えてしまうことがあります。

反対に、

「次いこう」
「大丈夫」
「ナイスチャレンジ」

という声は、安心の水を少し増やしてくれます。

安心の水が増えると、選手は次のプレーに意識が戻りやすくなります。

声かけは、ただ元気を出すためのものではありません。

仲間の意識が戻るための助けにもなります。

声かけの正解は一つではない

セミナー後、子どもたちの感想の中に、とても大事な気づきがありました。

「人によって、言われてうれしい言葉が違うと分かった」

これは本当に大切です。

ある子にとっては「どんまい」がうれしい。
別の子にとっては「次いこう」の方が切り替えやすい。
中には、ミスの直後は何も言われず、少し時間を置いて声をかけてもらう方がいい子もいるかもしれません。

声かけは、決まったセリフを言えばいいわけではありません。

仲間を観察することです。

今、この仲間はどんな状態なのか。
不安でいっぱいなのか。
悔しがっているのか。
もう次に行こうとしているのか。

そこを見ながら、言葉を選ぶ。

これは小学生にとっても、大人にとっても大切な練習です。

大人が教え込むより、子どもたちに考えさせる

大人は、つい正解を教えたくなります。

「こういう時は、こう言いなさい」
「仲間には前向きな言葉をかけなさい」

もちろん、それも必要な場面はあります。

でも、子どもたち自身に考えてもらうと、言葉はもっと自分ごとになります。

「自分はミスした時、どんな言葉をかけられると戻れるか」

「仲間が落ち込んでいる時、自分ならどんな言葉をかけたいか」

この問いを持つだけで、チームの声は少し変わります。

実際に、セミナー後の感想では、

「プラスの言葉を言うとチームがもっと良くなると思った」

「声を出すといいチームになれると分かった」

「しょんぼりしている選手も、声かけで良い雰囲気にできると分かった」

という声がありました。

子どもたちは、自分たちなりに感じ取っていました。

声は、チームの空気をつくる。

そして、仲間を次のプレーへ戻す力になる。

指導者や保護者の言葉も、チームの空気をつくる

これは子ども同士だけの話ではありません。

指導者や保護者の言葉も、子どもの心のコップに影響します。

ミスの直後に、すぐ指摘したくなることがあります。

「今のは判断が遅い」
「そこは逃げちゃダメ」
「もっと周りを見て」

内容としては正しいかもしれません。

ただ、子どもが不安でいっぱいの状態だと、正しい言葉でも受け取れないことがあります。

まず戻れる状態をつくる。

その後で、必要なことを伝える。

この順番を意識するだけでも、子どもへの届き方は変わります。

もちろん、厳しさが必要な場面もあります。

基準を伝えることは大切です。

でも、基準を伝える前に、子どもが受け取れる状態かどうかを見たいところです。

安心があるから、基準に向かえる。

この視点は、声かけにも当てはまります。

声を出せるチームから、戻れる声をかけられるチームへ

声を出すことは大切です。

でも、ただ大きな声を出せばいいわけではありません。

仲間の不安を増やす声もあります。
仲間の安心を増やす声もあります。

チームとして育てたいのは、仲間が次のプレーに意識が戻れる声です。

ミスした仲間に、どんな声をかけるか。
失点した後、どんな空気をつくるか。
自信をなくしている選手に、どんな言葉を渡すか。

そこに、チームの文化が表れます。

声の量より、声の質。

そして、声の質は、チームで育てることができます。

仲間の意識が次のプレーに戻れる声をかけられるチームへ。

その小さな一言が、次のプレーを変えるかもしれません。

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