主体性と自主性の違いがチームを変える
―コーチングラボつくばDAY5より―
はじめに
サッカーの現場ではよく「主体性を育てよう」「自主性を大事にしよう」という言葉が使われます。しかし、この2つの違いを明確に説明できる指導者は意外と少ないのではないでしょうか。今回のコーチングラボでは、このテーマを中心にディスカッションが行われました。その学びを整理してみます。
主体性と自主性の違い
- 自主性:与えられた課題や練習に対して、自分から積極的に取り組む姿勢。
例)「一対一の練習を20分やりなさい」と言われたときに、集中して全力で取り組む。 - 主体性:自分で課題を発見し、解決策を考えて行動する姿勢。
例)「最近ディフェンスとの駆け引きで負けることが多い。どう練習すればいいか?」と自ら考え、練習を提案する。
つまり、自主性は与えられたものに対して動く力、主体性はゼロから生み出す力だと言えます。
自律型チームをつくるために必要なこと
筑波大学の学生やコーチの声からは、次のような特徴が見えてきました。
- 自主練習が盛ん:練習後に自らボールを蹴り続ける姿勢が強さの源になっている。
- 学生主体の運営:カテゴリーごとに大学院生コーチが指導を担当し、選手同士で戦術確認を行う。監督が細かく指示しなくてもチームが機能している。
- ただし「殻を破る力」が不足:真面目で素直な選手が多い一方で、「もっとこうした方がいい」と提案したり、自分の意見を表明する力は弱い傾向にある。
指導者が目指すべきは、単に「言われたことをしっかりやる選手」を育てることではなく、自分から課題を設定し、仲間を巻き込みながら解決へ動ける選手を育てることです。
指導者の役割
ここで重要なのは、「指導者の変化がチームを変える」という視点です。
- 指導者が「選手に任せる勇気」を持つこと。
- 指導者自身が「主体性とは何か」を理解し、日常の声かけや練習設計に取り入れること。
例えば、練習の最後にキャプテンだけが話すのではなく、複数の選手に感想や意見を言わせる仕組みをつくる。これだけでも「主体的に考える場」を生み出すことができます。
現場での実践ヒント
- 練習に選手の提案を取り入れる
「次の試合に向けてどんな練習が必要だと思う?」と問いかけてみる。 - 意見を出しやすい雰囲気をつくる
「正解」を求めず、多様な意見を歓迎する空気をつくる。 - 小さな成功体験を積ませる
選手が提案した練習や戦術を実際に取り入れ、効果を実感させる。
おわりに
自主性のある選手は多くのチームにいます。しかし、未来を切り開くのは主体性のある選手です。指導者が環境を整え、声をかけることで、選手の中に眠っている主体性を引き出すことができます。
「与えられたことをやる」から「自分で課題を見つけて解決する」へ。
その一歩を促すのが、私たち指導者の役割なのかもしれません。