「主体性を育む指導の秘訣」〜筑波大学・小井土監督のリアルストーリー〜
今回は、筑波大学蹴球部・小井土監督との特別対談をお届けします。 監督歴11年で数々のタイトルを獲得してきた小井土監督が語る「選手の主体性を育てる指導」のエッセンスを、あなたの現場でも活かしていただけるよう、ポイントを整理してお伝えします。
なぜ「任せる勇気」が必要なのか?
小井土監督は、監督1年目に2部降格という大きな挫折を経験されました。 当時を振り返って、こんな言葉を残されています。
「1年目は自分1人で何とかしてやろうと思っていた。でも2年目、選手たちがポジティブなエネルギーで向き合ってくれた時に、自分がどれだけ無力で、逆に選手たちがいたから昇格できたんだと感謝を感じた」
この経験から生まれたのが、選手を信じて「任せる」指導スタイルでした。
具体的に何を「任せた」のか?
小井土監督が選手に任せたのは、こんなことでした:
1. パフォーマンス局の創設
- アナライズ班:対戦相手の分析を選手と一緒に実施
- ゲームエディット班:海外やJリーグの優れたプレー映像を編集
- ニュートリション班:栄養面のサポート
- メンタル班:心理面での選手サポート
2. 運営面の明確な役割分担
「今までは一部の学生が頑張って、多くの部員が見て見ぬ振りをしていた。それを、やるならみんなでちゃんとやろうと役割分担を明確にした」
3. 「やりたい者だけ」の原則
「別にやる必要はない。でもやる以上は、日本のトップ、世界のトップを目指せるような活動をしよう」
この結果、選手たちは自分から手を挙げ、主体的に取り組むようになったそうです。
「雰囲気」を科学的に捉える視点
小井土監督は「雰囲気」を単なる感覚的なものではなく、こう定義されています:
「雰囲気とは感情・気分の集合体。ポジティブな感情同士がぶつかり合えば増幅するし、ネガティブとポジティブがぶつかった時は競合が起こる。それは外から決められるものではなく、そこにいるメンバーで作り上げていくもの」
ネガティブな感情への対処法
練習中にスマートフォンをいじっている選手に対して: 「携帯をいじっている行為そのものではなく、その行為に至ってしまうメンタリティ、つまり『この組織への帰属感やロイヤリティの無さ』を感じると伝える」
行為を注意するのではなく、その背景にある心の問題に触れることで、選手の意識が変わっていったそうです。
「誰でも活躍できる場」を作る
200名の部員がいても、全員がスターティングメンバーにはなれません。 でも小井土監督は言います:
「分析で対戦相手の情報を集めてトップチームの勝利に貢献する人もいるし、スポンサー活動で部に利益をもたらす人もいる。YouTubeの動画作りで部の価値を高める人もいる。誰でも活躍できる場があることが大事」
これにより、選手たちは互いを尊敬し合い、感謝し合う関係になっていったそうです。
受け継がれる理念の力
現在も筑波大学で語り継がれる理念「大学サッカーを牽引していく」は、実は選手から生まれた言葉でした。
2015年、2部から1部昇格を決めた試合後、当時のキャプテン・早川選手がスタンドに向かって言った言葉:
「これから筑波大学は大学サッカーを牽引していきます。応援よろしくお願いします」
この言葉が10年経った今も、新入生への動機づけとして使われているそうです。
育成年代の指導者へのメッセージ
小井土監督からの最後のメッセージです:
「サッカーが好きで集まってきて、上手くなりたくて毎日暑い中でも寒い中でもボールを蹴っている子たちにとって、本当にどういう環境がいいのか。常に自分自身も変わっていかなければいけない。これが絶対だとなった瞬間に、多分いろんなものがうまくいかなくなる」
そして: 「周りの人と一緒に試行錯誤しながら進んでいくしかない。だからこそ指導者は面白いし、自分自身を成長させてくれる場所だと思って、楽しみながらやってもらいたい」
まとめ:「心が整えば、未来が変わる」
小井土監督のお話から見えてくるのは、選手の主体性を育てるために最も大切なのは:
- 指導者自身が変わる勇気を持つこと
- 選手を信じて任せる場面を意図的に作ること
- 誰もが活躍できる場を用意すること
- 感情や雰囲気を科学的に捉えて対処すること
技術や体力だけでは到達できない”その先”へ。 選手が本番で力を出せる、ミスから立ち直れる、自分の言葉で感情を語れる。
そんな育成を、共に実践していきませんか?
動画はこちらからご覧いただけます: 主体性を育む指導とは?
あなたの現場でも、きっと活かせるヒントがあるはずです。
ぜひ一度、ご覧になってみてください。
最幸の指導者人生を共に歩みましょう。