先日、ある中学生年代のサッカーチームで、保護者向けのオンラインセミナーを行いました。
テーマは、
子どもの“戻れる力”を家庭から支える
です。
事前に生徒向けのコミュニケーションセミナーを行っていたこともあり、今回はその内容を家庭での関わりに置き換えて考える時間にしました。
心のコップ。
不安の水と安心の水。
聴く力。
選ぶ言葉。
相手の良さに気づくこと。
自分の思い込みに気づくこと。
これらは、学校やチームの中だけで使うものではありません。
家庭の中でも、とても大切な視点になります。
親の一言は、子どもの心のコップを変える
子どもが試合から帰ってきた時、親はつい聞きたくなります。
「今日はどうだった?」
「出られたの?」
「なんであそこでミスしたの?」
「もっとこうした方がよかったんじゃない?」
どれも、子どもを思っての言葉です。
ただ、子どもの心のコップが不安でいっぱいの時、その第一声がさらに不安の水を増やしてしまうことがあります。
試合に出られなかった。
ミスをした。
仲間とうまくいかなかった。
自分でも整理できていない。
そんな状態の時、すぐに評価やアドバイスが入ると、子どもは話す前に心を閉じてしまうことがあります。
大切なのは、正しいことを言う前に、子どもが受け取れる状態かどうかを見ることです。
「悔しかったね」
「少し落ち着いたら聞かせて」
「今日はどんな気持ちだった?」
そんな一言が、安心の水を少し増やしてくれることがあります。
参加状況から見えたこと
今回の参加者は、中学1年生の保護者が多く、中学2年生は少数、中学3年生の保護者はいませんでした。
正直に言えば、少し寂しさも感じました。
本当は、学年が上がるほど聞いてほしい内容でもあります。
子どもとの距離感。
進路や勉強との両立。
サッカーを続けるかどうか。
親がどこまで関わるか。
学年が上がるほど、親子の関わりは難しくなっていきます。
ただ、同時に大切な気づきもありました。
中学1年生の入口で、保護者の方と共通言語を持てることには、大きな意味がある。
問題が大きくなってからではなく、まだ親も子どもも関わり方をつくっていける時期に、
「心のコップ」
「安心の水と不安の水」
「親の不安と子どもの課題を分ける」
「子どもが戻れる家庭」
という言葉を共有できる。
これは、保護者支援の大事な入口だと感じました。
親が先回りすると、子どもの課題を奪うことがある
当日は、卒業生保護者の方と、現在もサッカーを続けている卒業生にも話をしてもらいました。
親としてどんな不安があったのか。
どんなふうに見守ってきたのか。
選手側から見て、どんな関わりが支えになったのか。
その話の中で印象に残ったのは、子どもにとって大切なのは、親がすべてを整えることではないということでした。
自分はどうなりたいのか。
そのために何ができるのか。
何のためにサッカーを続けるのか。
何のために勉強するのか。
この問いを、本人が自分の中に持つことが大切です。
親が心配になるのは自然です。
でも、不安が強くなりすぎると、先回りして答えを渡したくなります。
「こうした方がいい」
「それはやめた方がいい」
「こう考えなさい」
もちろん、必要な助言もあります。
ただ、親が答えを出しすぎると、子どもが自分で考え、自分で戻る経験を持ちにくくなることがあります。
試合に出られない。
ミスをする。
うまくいかない。
仲間との関係で悩む。
勉強との両立に迷う。
これらは苦しい経験です。
でも同時に、子ども自身が自分と向き合う大切な経験でもあります。
家庭は、甘やかす場所ではなく、戻れる場所
家庭は、ただ優しくする場所ではありません。
何でも許す場所でもありません。
大切なのは、子どもが安心して本音を出せること。
そして、もう一度自分の基準に戻れることです。
「次はどうしたい?」
「そのために何ができそう?」
「今、自分で動かせることは何だろう?」
こうした問いは、子どもを責めるためのものではありません。
子どもが自分の感覚に戻り、次の一歩を考えるための入口です。
親は、子どもを崩れないように守り切ることはできません。
傷つくこともあります。
失敗することもあります。
思い通りにいかないこともあります。
でも、崩れた時に戻れる場所をつくることはできます。
安心の水を増やす言葉を選ぶことはできます。
子どもが自分で考える余白を残すことはできます。
家庭から支えるリバウンドメンタリティー
リバウンドメンタリティーとは、崩れない力ではありません。
崩れても戻る力です。
子どもがミスをしないように、親がすべてを管理することではありません。
子どもが悩まないように、先回りして道を整え続けることでもありません。
大切なのは、崩れた時に安心して戻れる空気を家庭に残しておくこと。
そして、子ども自身が、
「自分はどうしたいのか」
「そのために何ができるのか」
を考えられる関わりを続けることです。
親の一言は、子どもの心のコップを変えます。
不安の水を増やすこともあれば、安心の水を増やすこともあります。
完璧な親である必要はありません。
ただ、子どもが崩れた時に、戻ってこられる場所でありたい。
そこから、家庭で育つリバウンドメンタリティーが始まるのだと思います。
コメントを残す