日本代表のチームづくりを見ていると、単に「今コンディションの良い選手を並べる」だけではないのだろうなと感じることがあります。
もちろん、私は内部事情を知っているわけではありません。
選手選考や役割について、外から断定的に語ることはできません。
ただ、メンタルコーチの視点で見ると、代表チームには「うまい選手」だけでなく、チームの空気を上げる人、基準を示す人、経験を伝える人が必要なのではないかと感じます。
これは、育成年代の中学・高校サッカーチームにもそのまま置き換えられるテーマです。
強いチームは、スタメンだけでできているわけではありません。
ゴールを決める選手だけでできているわけでもありません。
声を出して空気を上げる選手。
苦しい時でも基準を下げない選手。
自分の経験を仲間に伝えられる選手。
ベンチから流れを支える選手。
そうした一人ひとりの役割が、チームの練習濃度と、試合での戻る力をつくっていくのだと思います。
チームには、見えにくい役割がある
サッカーでは、どうしても試合に出ている選手に目が向きます。
得点した選手。
アシストした選手。
守備で目立った選手。
スタメンに選ばれた選手。
もちろん、ピッチで結果を出すことは大切です。
でも、チームは試合に出る11人だけでできているわけではありません。
練習の空気をつくる選手がいる。
アップの最初に声を出す選手がいる。
ミスした仲間に一言かける選手がいる。
苦しい時に「次の一本」と戻す選手がいる。
ベンチから前向きな雰囲気を出す選手がいる。
黙って準備の基準を示す選手がいる。
こういう役割は、記録には残りにくいかもしれません。
得点者欄にも、アシスト欄にも出ません。
スポーツニュースでも、なかなか取り上げられません。
でも、チームの中では確実に効いています。
目立たないけれど、チームを支えている。
派手ではないけれど、練習濃度を上げている。
そういう選手がいるチームは、簡単には崩れません。
役割1。空気を上げる人
経験豊富な選手の中には、ピッチ内外でチームの空気を上げる力を持っている人がいます。
たとえば、明るく声を出す。
練習の入りをつくる。
若い選手に声をかける。
苦しい時にも顔を上げる。
ベンチにいても前向きなエネルギーを出す。
これは、ただ元気な人という意味ではありません。
空気を上げる人は、チームの心理的な温度を上げています。
育成年代のチームでも同じです。
アップの最初に、明るく声を出せる選手。
練習開始の空気を変えられる選手。
ミスした仲間に「次、次」と声をかけられる選手。
負けている時に、下を向かずに顔を上げられる選手。
試合に出ていなくても、ベンチから前向きな声を出せる選手。
こういう存在は、チームにとってとても大切です。
もちろん、全員が明るいキャラクターである必要はありません。
全員が太陽みたいだったら、それはそれで少し暑いです。
夏場は特に大変です。
でも、チームの中に一人でも二人でも、空気を少し上げられる選手がいると、周りは助かります。
ミスの後に空気が重くなりすぎない。
練習の入りがぼんやりしない。
ベンチも試合に参加している感じが出る。
これは、技術とは別のチーム貢献です。
役割2。基準を示す人
チームには、基準を示す人も必要です。
調子が良い時だけ頑張るのではなく、うまくいかない時にも準備を続ける人。
立場が安定しない時期があっても、自分の場所でやり続ける人。
試合に出られない時も、腐らずに練習の基準を落とさない人。
そういう選手は、チームの練習濃度を支えています。
育成年代に置き換えると、たとえばこんな選手です。
Aチームに入れなくても、Bチームで全力でやる。
ベンチスタートでも、アップの準備を怠らない。
調子が悪くても、練習前の準備を変えない。
ミスしても、次のプレーに戻る。
自分の課題から逃げずに取り組む。
こういう姿は、周りに伝わります。
口で「本気でやろう」と言うより、行動で基準を示す選手がいます。
指導者は、こういう選手を見逃さないことが大切です。
試合に出ているかどうかだけではなく、日常の基準を支えている選手を見ているか。
ここは、チームづくりでとても大事な視点です。
そして選手自身も、こう考えてほしいのです。
今、試合に出ていないからといって、チームに貢献できないわけではない。
自分の準備の質、自分の練習姿勢、自分の戻り方が、チームの基準になることがある。
これは大きな役割です。
役割3。経験を伝える人
チームには、経験を伝える人も必要です。
代表チームであれば、元キャプテン経験者や国際舞台を知る人が、若い選手に経験を伝える役割を担うことがあります。
これも育成年代に置き換えることができます。
元キャプテン。
上級生。
ケガや挫折を経験した選手。
試合経験の多い選手。
ベンチからチームを見てきた選手。
卒業生やOB。
こうした人たちには、伝えられるものがあります。
ただし、ここで大切なのは、上から教えることではありません。
「俺の時代はこうだった」
「昔はもっと厳しかった」
「今の選手は甘い」
これでは、経験が押しつけになります。
大切なのは、自分の経験を、仲間が使える言葉に翻訳することです。
たとえば、
「自分は試合に出られない時期に、腐りそうになった。でもその時に準備を続けたことが、後で生きた」
「ケガをした時、焦って戻ろうとして失敗した。だから今苦しんでいる選手には、焦らず体の反応を見てほしい」
「大事な試合でミスをしたことがある。その時に仲間の一言で戻れた。だから失点後の声は大切だと思う」
こういう言葉は、後輩や仲間に届きます。
経験は、自慢するためにあるのではありません。
誰かが同じ場面で崩れそうになった時、戻るための道しるべになります。
キャプテンだけが背負わなくていい
育成年代のチームでは、チームづくりがキャプテンに集中しすぎることがあります。
声を出すのもキャプテン。
注意するのもキャプテン。
空気を変えるのもキャプテン。
基準を守らせるのもキャプテン。
でも、これではキャプテンが苦しくなります。
強いチームは、キャプテン一人が引っ張るチームではありません。
空気を上げる人がいる。
基準を守る人がいる。
仲間を戻す人がいる。
準備の質を上げる人がいる。
声で練習濃度を上げる人がいる。
黙って背中で示す人がいる。
経験を後輩に伝える人がいる。
全員が同じリーダーになる必要はありません。
全員がキャプテンのように大きな声でチームをまとめる必要もありません。
でも、全員にチームを良くする役割はあります。
静かな選手には、静かな選手の貢献があります。
明るい選手には、明るい選手の役割があります。
経験のある選手には、経験のある選手の伝え方があります。
まだ試合に出ていない選手にも、チームの空気を支える役割があります。
この視点があると、チームの見え方は少し変わります。
練習濃度は、みんなで上げていくもの
最近、育成年代の選手たちと「練習濃度を上げるための基準づくり」について話す機会があります。
練習濃度というと、監督やコーチが上げるものと思われがちです。
もちろん、指導者の関わりは大切です。
練習メニューも大切です。
声かけも大切です。
でも、練習濃度は指導者だけで上げるものではありません。
キャプテンだけが上げるものでもありません。
チームの中に、空気を上げる人が増える。
基準を守る人が増える。
戻す声を出す人が増える。
準備の質を大切にする人が増える。
そうすると、練習の質は自然に上がっていきます。
たとえば、移動が少し早くなる。
ボールを拾うのが早くなる。
ミスの後に顔を上げる選手が増える。
アップの入りが変わる。
ベンチの声が変わる。
練習中の待ち時間の関わりが変わる。
こういう小さな変化が、チーム文化をつくります。
チーム文化は、スローガンだけではできません。
日常の小さな行動の積み重ねでできていきます。
まとめ
チームを強くするのは、スタメンだけではありません。
うまい選手だけでもありません。
ゴールを決める選手だけでもありません。
空気を上げる人。
基準を守る人。
経験を伝える人。
苦しい時に戻す声を出す人。
ベンチから流れを支える人。
黙って背中で示す人。
そうした一人ひとりの役割が、チームの練習濃度を上げ、試合で崩れた時に戻れる力を育てていきます。
全員が同じリーダーになる必要はありません。
でも、全員にチームを強くする役割があります。
自分は試合に出ていないから関係ない。
自分はキャプテンではないから関係ない。
自分は目立つ選手ではないから関係ない。
そうではありません。
チームの空気は、全員でつくるものです。
一人ひとりが自分の役割を見つけ、その役割を果たしていくことで、チームの文化は少しずつ育っていくのだと思います。
読者に考えてほしい問い
自分はチームの中で、どんな役割を担えるだろうか。
チームの空気が落ちた時、自分にできる小さな行動は何だろうか。
試合に出ていない時でも、チームに貢献できることは何だろうか。
自分が守り続けたい基準は何だろうか。
後輩や仲間に伝えられる経験は何だろうか。
自分のチームでは、どんな役割を持った選手がいるでしょうか。
次の練習を見る時、スタメンや主力だけでなく、空気を上げている選手、基準を守っている選手、仲間を戻している選手にも、ぜひ少しだけ目を向けてみてください。
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