― 指導で変えるべきは“声”ではなく“関わり方” ―
先日、ある高校サッカー部のBチームでグループセッションを行いました。
テーマは「主体性」。
選手たちからは、
「自分たちで考えて行動する」
「勝ちに貪欲になる」
といった前向きな意見が出ました。
ただ、どこか抽象的で、
「結局何をすればいいのか」が曖昧なまま進んでいました。
そこで、こんな問いを投げました。
「じゃあ、それって具体的に何で表せる?」
少し間が空いて、出てきたのが「声」でした。
そこから流れが変わります。
前日の試合で「言ってもらって嬉しかった声」を書き出し
ホワイトボードに貼りました。
そして、それを「指示」「励まし」「感謝」などの種類別に分類しました。
「これが今のチームの現状だよね。これ見てどう思う?」
すると、選手の一人がこう言いました。
「盛り上げる声が足りないと思います。」
そこで、もう一歩踏み込みます。
「じゃあ、どんな声が、どんなタイミングであったらいい?」
選手たちから出てきたのは
・試合の開始時
・アップのときから
「さあ、行こう!」
「よっしゃ、行こう!」
といった、全員で掛け合う声でした。
そして、その場で確認します。
「それ、いいと思う人?」
全員が手を挙げました。
ここで終わらせません。
「じゃあ、一回やってみよう」
その場で実際に声を出してみることにしました。
すると、普段あまり声を出さない選手が前に出て
「よっしゃ行こう!」
と声をかけました。
それに対して、全員が
「よっしゃ行こう!」
と返します。
この瞬間、明らかに空気が変わりました。
「やった方がいいこと」が決まっただけでなく
“実際にできる”状態になったからです。
さらに印象的だったのは、失点後の場面です。
キーパーに聞きました。
「失点したとき、どんな状態になる?」
すると彼は、
「ミスっちゃったなって、自分を責めてます」
と答えました。
その上でこう続けます。
「どんな声をかけてもらえると助かる?」
「“取り返せる”とか、“切り替えよう”って言ってもらえると助かります」
そこでチーム全体に問いかけました。
「失点やミスのあとに、“切り替えよう”って言った方がチームは強くなると思う人?」
全員が手を挙げました。
ここでも終わらせません。
「じゃあ、やってみよう」
また、普段あまり声を出さない選手が前に出て
「切り替えよう!」
と声をかける。
それに対して全員が、
「切り替えよう!」
と大きな声で返しました。
この場面でも、空気が一段変わりました。
言葉の意味が、頭の理解ではなく
体感として共有された瞬間です。
そして最終的に決まったのが
「ミスや失点の後は、全員で“切り替えよう”と声をかける」
というルールでした。
ここまで読むと、
「やっぱり声を出させる指導が大事なのか」と思うかもしれません。
でも、現場で起きていたことは少し違います。
セッション後の練習では、明らかに声が増えていました。
しかしそれは
「声を出せ」と言ったからではありません。
では、何が変わったのか。
指導者としてやるべきことは、この3つです。
① 抽象を具体に落とす
「主体性を持て」ではなく
・どんな場面で
・どんな言葉を使うか
まで落とすこと。
② 選手に“気づかせる”
指導者が答えを言うのではなく
問いかけることで、自分たちで見つけさせること。
③ その場で“やらせてみる”
決めるだけで終わらせず
一度その場で実際にやってみること。
この3つが揃うと
「わかった」が「できる」に変わります。
声は“作る”ものではなく“揃う”もの
・何を言えばいいかが分かっている
・自分たちで決めている
・一度やってみている
・仲間の状態を理解している
この状態が揃うと
声は自然と増えていきます。
もしチームの声を変えたいなら
「もっと声を出せ」と言う前に
・具体的な言葉が決まっているか
・選手が納得しているか
・一度やってみているか
この3つを見直してみてください。
それだけで、チームの空気は確実に変わります。
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