選手の「自分責め」はどこから来るのか?〜インナーペアレントという視点から〜

先日行ったZoomセッションで、ある大学生アスリートとの対話が心に残りました。彼は怪我から復帰し、就職活動にも取り組んでいる真っ只中。そんな中で、こんな悩みを口にしました。

「自分に厳しくしすぎてしまう。もっとやれたはず…って、自分を責めてしまうんです。」

彼のように「完璧にやらなければ」「相手をがっかりさせたくない」「休むと不安になる」といった“内なる声”に追い立てられている選手は少なくありません。こうした傾向には、心理学で言う「インナーペアレント(内なる親)」の影響があります。


🔍 インナーペアレントとは?

私たちは子どもの頃、親や大人からの言葉や態度を通して「自分らしさ」や「生き方」を学びます。これらの体験は内面に刻まれ、「〜すべき」「〜でなければならない」といった“内なる声”として心の中に居続けます。

これが、**インナーペアレント(内なる親)**です。

インナーペアレントには大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 🟡 養育的なインナーペアレント:安心感や受容、励ましを与えてくれる存在
  • 🔴 批判的なインナーペアレント:完璧主義や焦り、自己否定を生む声

セッションの中で彼と一緒に確認したのは、この「批判的なインナーペアレント」の存在でした。


🧠 よくある5つの“批判的な声”

私の経験から、次のような「内なる声」が選手の中に潜んでいることが多いです。

  1. 完璧であれ:「ミスしたらダメ」「もっとやれたはずだ」
  2. 相手を喜ばせろ:「嫌われたくない」「期待を裏切りたくない」
  3. 急げ:「のんびりしてちゃダメ」「常に何かしていなきゃ」
  4. 強くあれ:「弱さを見せるな」「泣いたら負けだ」
  5. 一生懸命やれ:「頑張りが足りない」「もっと努力しなきゃ」

彼が特に共感していたのは、2番と3番。
「親の機嫌をいつも気にしていた」「オフの日にリラックスできない」と振り返ってくれました。


💡 なぜインナーペアレントを知ることが大切か?

多くの選手がこの“内なる声”に無自覚のまま、心をすり減らしています。

重要なのは、「そういう声があるんだ」と認識することからスタートすること。

そして、「どんな自分でも大丈夫なんだ」という体験を少しずつ積み重ねていくことが、批判的なインナーペアレントを「養育的な存在」へと変えていく道なのです。


🌱 指導者ができる関わりとは?

では、私たち指導者ができることは何でしょうか。

それは、

「どんな君でも、大丈夫だよ」
「結果が出なくても、君の頑張りを見てるよ」

といった、**“無条件の肯定的まなざし”**を持つことです。

選手が自分の中にある厳しい声に苦しんでいるとき、安心できる他者の存在が、救いとなります。それは私たち指導者自身が、選手にとっての「養育的なインナーペアレント」になれるということでもあります。


✍️ 最後に:小さな「大丈夫体験」を積み重ねよう

人は一瞬では変われません。けれど、少しずつなら変われます。

「言いたいことを言えた」
「休んでも大丈夫だった」
「断っても嫌われなかった」

そうした“小さな成功体験”を積むことが、選手の心の中に「安心の種」を育てていきます。

選手が心から力を発揮できるようになるために。
私たち大人ができるのは、「まず、見守ること」かもしれません。

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