サッカー育成年代の指導者に知って欲しい「本田ノート」と「成長にこだわれ」の教え
サッカー日本代表の本田圭佑選手が小学校時代から続けてきた「本田ノート」。これは彼のメンタル面を支え、成長を促す大きなツールとなりました。
今回は、このノートをスポーツ心理学の観点から検証するとともに、本田選手の名言「成功にこだわるな、成長にこだわれ」の意味についても触れ、育成年代の指導者や保護者の皆様の参考にして頂ければ幸いです。
本田ノートとは?
本田選手がこのノートを始めたのは、小学三年生のとき。カヌーの元日本代表である大叔父・本田大三郎さんから勧められたことがきっかけでした。ノートには、起床・就寝時間、脈拍数、体重、食事内容、排便の様子、練習内容の反省などが詳細に記録されており、本田選手はこれを継続し続け、最終的には30冊にも及ぶ記録を残しました。
セルフモニタリングの効果
このような「本田ノート」は、スポーツ心理学の分野では「セルフモニタリング」と呼ばれます。これは、自分自身の行動、思考、感情を観察し、記録することを指し、メンタルトレーニングの土台として非常に重要です。以下に、セルフモニタリングの具体的な効果を紹介します。
効果その1:「気づき」
セルフモニタリングの最大の効果は、「気づく」ことです。例えば、試合前日のルーティンや試合中の自己コントロール、チームメイトとのコミュニケーションについて、自分の考え方や行動がどのように影響を与えているかに気づくことができます。この「気づき」は、自己改善の第一歩となり、具体的な対処法を考える上での重要なポイントです。
効果その2:「やる気の維持」
セルフモニタリングは、目標の進捗を確認する手段としても有効です。目標達成までの道のりを明確にすることで、選手は練習へのやる気を持続させることができます。また、悔しい経験を記録することで、その感情を忘れずに持続させることができ、さらなる努力を促すことにもつながります。
成功ではなく、成長にフォーカスすることの重要性
本田選手は「成功にこだわるな、成長にこだわれ」という言葉を多くの場面で語っています。本多選手は、目先の結果にとらわれず、長期的な成長を重視していることを象徴する言葉です。ノートを通じて自己の進歩や課題を客観的に見つめ直すことで、短期的な成功や失敗に一喜一憂せず、自己の成長を着実に追求することが可能になります。
チームでの実践:月例の振り返りアンケート
私がサポートしている中高サッカー部でも、毎月1回、選手たちに振り返りと次の目標設定を行うアンケートを実施しています。
このアンケートでは、
①今月を振り返って個人として成長したと感じることは何ですか?
②個人としての課題や伸びしろは何ですか?
③来月の今頃、個人として理想の状態は?
④そのために意識することや行動することは?
というシンプルな問いに答えてもらいます。
このアンケートに真剣に向き合っている選手は、中長期的に確実に成長しているのを目の当たりにしています。
例えば、高校1年生からサッカーを始めたある選手が、毎日の練習とアンケートに真剣に向き合い、3年生になった時にはスタメンを獲得するまでに成長しました。自己理解を深め、自分自身の成長にフォーカスすることで、選手たちは一歩一歩確実に前進しています。
まとめ
セルフモニタリングの重要性を理解し、日常的に取り入れることで、選手たちはメンタル面で大きな成長を遂げることができます。また、本田選手の言葉を胸に、選手たちが自己の成長にフォーカスし続けることができれば、結果として成功がついてくるでしょう。育成年代の選手たちが、自己理解を深め、目標に向かって進んでいくための強力なツールとして、「ノート」の活用をぜひ検討してみてください。