「大丈夫」が、チームを戻し始めた試合

先日、ある高校サッカーチームに対して、
試合前のグループセッションを行いました。

テーマは、

「失点した後、人の心に何が起きるのか」

です。

最初に選手たちに見せたのは、二つのコップのスライドでした。

一つは、

“不安が少なく、安心感が多いコップ”。

もう一つは、

“不安が多く、安心感が少ないコップ”。

そして選手たちに聞きました。

「失点した直後って、どっちのコップになる?」

するとみんな、

「不安が多い方です」

と答える。

さらに聞きました。

「じゃあ、得点した後は?」

すると今度は、

「安心感が多い方」

になる。

ここまでは、みんなすぐ分かるんです。

その後、もう一つ質問しました。

「どっちの状態の方が、パフォーマンス良くなる?」

すると全員が、

「安心感が多い方」

と答えました。

つまり選手たち自身が、

不安が強すぎると、

・視野が狭くなる
・判断が遅れる
・声が減る
・体が固くなる

ということを、感覚的に分かっているんですよね。

だから次に聞きました。

「じゃあ失点した後、どうしたらいい?」

すると選手たちから、

「不安を減らす声を掛ける」
「安心感を増やす」
「大丈夫って言う」

そんな意見が出てきました。

そこで今度は付箋を使って、

“チームを戻す声”

を書き出してもらったんです。

すると、

「大丈夫」
「落ち着いて」
「まだいける」
「切り替えよう」
「次いこう」

そんな言葉がたくさん出てきました。

そしてそれを、みんなでシェアした。

私は最近、

こういう時間ってすごく大事だなと思っています。

ただ話を聞くのではなく、

「自分たちで言語化する」

ことで、

チームの共通認識になっていく。

そして迎えた、インターハイ予選。

真夏みたいな暑さでした。

その中でチームは、先制を許しました。

以前のこのチームなら、

そのまま空気が沈んでいたかもしれません。

でも今回は違いました。

失点直後から、

「大丈夫!」
「落ち着いて!」
「まだいける!」

そんな声が、ベンチやピッチの中から飛び交っていたんです。

すると不思議なもので、

チームが止まらない。

実際、短時間で追いついた。

さらにまた失点。

それでも、

「切り替えよう!」
「まだいける!」

という声が出る。

そして、もう一度追いついた。

結果はPK戦。

4対5で敗戦でした。

もちろん悔しかったと思います。

ただ、試合後の空気が以前とは全然違ったんです。

誰一人、仲間を責めない。

PKを外した選手も、

悔しがってはいました。

でも周りが責める空気は、まったくなかった。

そして驚いたのは、

泣いている選手がほとんどいなかったことです。

もちろん、

「悔しくない」

わけではない。

でもどこか、

「やり切った」

という空気があったんですよね。

試合後、ある選手に聞きました。

「今日の自分のパフォーマンス、10点満点で何点?」

すると彼は、

「7点です」

と答えました。

「結構やれました」

と。

さらに、

「課題は何?」

と聞くと、

「体力と精度です」

と即答した。

そして、

「じゃあ明日から何意識する?」

と聞くと、

「もっと走り込みます。
トラップとかパスとか、一つ一つ丁寧にやります」

と言っていました。

これ、すごく大きな変化だと思うんです。

以前なら、

負けた後、

「終わった」

になっていたかもしれない。

でも今回は、

「次、何を改善するか」

に意識が向いている。

私は最近、

回復とは、

突然強くなることではない、

と思っています。

最初に変わるのは、

声。
空気。
表情。
支え合い。
踏ん張り。

そんな、

“結果になる前の変化”

なのかもしれません。

苦しい時に、

「大丈夫」

と言い合える空気。

それが、

少しずつチームを戻していく。

人は、

不安をゼロにして強くなるわけではありません。

不安の中でも、

支え合いながら戻れるようになっていく。

最近、そんなことを現場で感じています。

そしてこれは、

スポーツだけではない気もしています。

家庭でも。
学校でも。
職場でも。

人は不安が強いと、

視野が狭くなる。

でも、

「大丈夫」

と言ってくれる存在がいると、

少し呼吸が戻る。

少し周りが見える。

するとまた、一歩動けるようになる。

チームを変えるのは、

特別な魔法ではなく、

日常の声や空気なのかもしれません。

私自身も、まだまだ探求中です。

時々、不安になると、

頭の中で勝手に“最悪シミュレーション大会”が始まります。

かなり高頻度開催です。

でも最近は、

不安をなくすことより、

「戻れること」

の方が大事なんじゃないかと思っています。

さて、

あなたのチームや家庭では、

苦しい時、

どんな声が飛び交っているでしょうか。

その声は、

人を追い込む声でしょうか。

それとも、

人を戻していく声でしょうか。

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