選手が“大事な試合で考えすぎる”根本原因と、価値観コーチングが効く理由
今日は、指導者の方がよく悩む
「大事な試合ほど考えすぎてしまう選手」
が、なぜ価値観コーチングで改善するのか――
そしてどう行動に落とし込むのか――を、
ひとつの実例をもとに分かりやすくお伝えします。
【なぜ大事な試合ほど“考えすぎる”のか?】
結論から言うと、
判断の基準(=価値観)が曖昧だから です。
この状態は、ちょうど
【目的地を設定していない“カーナビ”と同じです】
目的地がセットされていないカーナビは、
- どの道に進めばいいか分からない
- 周りの車の動きに振り回される
- ちょっと道を外れると不安になる
- 渋滞すると「このままでいいのか?」と焦る
つまり、
判断の軸がないために、全部が気になり、情報過多で疲れる。
ところが目的地(=価値観)が決まると、
- 道に迷わない
- 周りの車にぶれない
- 渋滞しても落ち着いて対応できる
- “今何をすればいいか”が瞬時に分かる
これとまったく同じことが、選手の頭の中でも起きます。
【実例:選手Aのケース】
▼悩み
「大事な試合前になると、ミスしたら…替えられたら…って考えすぎて集中できない」
まず私はこう聞きました。
「どんな“余計なこと”が浮かぶ?」
A:
- ミスしたらどうしよう
- 替えられたらどうしよう
- 負けたらどうしよう
完全に“目的地なしカーナビ状態”です。
【価値観を質問で引き出す】
「これまでのサッカーで、一番影響を受けた人は?」
A:
「兄です。ずっと憧れてきました。」
「兄のどんなところに憧れたの?」
A:
- 努力を続ける
- 仲間を大切にする
- 集中力が高い
ここから価値観の原石が出てきます。
【本人の言葉から価値観をまとめる】
私:
「じゃあ、その中で“あなたが最も大事にしたいこと”は?」
A:
「努力し続ける姿勢(プロセスを大切にしたい)」
「仲間とつながる気持ち(チームワーク)」
「余計なことを考えず“今”に集中したい(集中)」
こうして 価値観=目的地 が明確になりました。
【価値観→行動(すべて本人発)】
ここからが一番重要です。
私はこう尋ねました。
「その価値観を“試合中の行動”にするとしたら?」
Aは自分でこう答えました。
価値観①:プロセス(努力を続ける姿勢)
A:
「ミスした瞬間に、もう一度“自分の基本プレー”に戻ることです。」
→ 行動:
ミス直後、“基本プレー1つ”を必ず実行する
例:
- DFなら「まず体を寄せる」
- MFなら「2タッチで前を向く」
“努力を積む姿勢の具体化”です。
価値観②:チームワーク
A:
「仲間とつながり続けたいので、声の役割を1つ決めたいです。」
→ 行動(より具体化):
試合中の「言葉の役割」を決める
例:
- 味方がミスした時
- 「気にしない、次いこう!」
- 「まだ全然いけるよ!」
「声を出す」ではなく
“どのシーンで/どの言葉を/誰にかけるか” を決めることで具体化します。
価値観③:集中
A:
「迷って判断が遅れるので…3秒以内に決めたい。」
→ 行動:
判断は3秒以内で終えるルールを自分に課す
これで迷いがなくなります。
【なぜこれで“大事な試合の考えすぎ”が止まるのか?】
✔ 理由①:迷った時の “戻る場所” がはっきりする
価値観が整理されると、
不安が出ても 「自分はこれを大事にするんだ」 と行動の基準がすぐに思い出せます。
例)
- 「ミスしたらどうしよう…」
→ “プロセス重視” → 基本プレーに戻る - 「替えられたらどうしよう…」
→ “チームワーク” → 仲間とつながる声を出す
不安が浮かんでも、すぐ“やること”が決まるようになります。
✔ 理由②:行動が決まると、迷いが入り込む隙間がなくなる
価値観に合わせてやるべき行動がひとつ決まると、
余計なことを考える時間が消えます。
- ミス後は「次の1プレー」
- 集中したい時は「3秒で判断」
- チームワークなら「この声をかける」
行動が決まると頭の余白が減る → 雑念が入りにくくなる。
✔ 理由③:自分で決めた行動だから、本番でも戻れる
コーチに与えられた行動ではなく、
“自分の言葉で決めた行動” なので緊張しても忘れにくい。
そして、気持ちが揺れた瞬間に自分で気づける(=メタ認知)ため、
またすぐに自分の行動へ戻ることができます。
【実際の変化】
この流れを整えたことで、選手Aにはこんな変化が起きました。
- ミス後の切り替えが明らかに速くなる
- 判断がブレず、シンプルで安定する
- 大事な試合でも“普段と同じ集中”ができるようになる
価値観(目的地)が決まり、
行動(ルート)が明確になったことで、
プレッシャーの中でも迷いが激減したケースです。
【指導者の皆さんへ】
オフシーズン、または新チームが始まるこの時期は、
選手の“価値観の目的地設定”に最適なタイミング です。
【価値観を引き出すための5ステップワーク】
そのままコピーして使えます。
① 悩みや迷いを聞く
・最近のプレーで気になっていることは?
・どんな場面で迷う?
② 影響を受けた人物を聞く
・誰に憧れてきた?
・どんな部分に惹かれた?
③ 価値観の言語化
・その中であなたが最も大事にしたいことは?
④ 行動への落とし込み(本人が答える)
・その価値観を行動で表すなら?
・明日すぐできる1つは?
⑤ メタ認知の確認
・気持ちが揺れた時、どう気づく?
・気づいたらどの行動に戻る?
■最後に
選手が迷うのは、
“メンタルの弱さ”ではありません。
ただ 目的地(価値観)が設定されていないだけ。
価値観が明確になれば、
大事な試合でもプレーが揺れなくなります。
ぜひ、チームの新しいスタートのタイミングで
価値観を引き出すワークを実施してみてください。
ご質問やご相談は、いつでも遠慮なくどうぞ。
指導者の皆さんと一緒に、選手の未来を創っていければ嬉しいです。
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