前十字靭帯を2度負傷した選手に、指導者はどう寄り添うべきか
選手が大きな怪我をしたとき、特に前十字靭帯のように復帰まで長い時間を要する怪我は、本人にとって「競技人生が揺らぐ瞬間」となります。しかも、同じ箇所を2度負傷すれば、その心理的なダメージは計り知れません。では、指導者としてどのように関わることができるのでしょうか。
1. 「再起のプロセス」として捉えさせる
怪我を「失われた時間」と感じさせないことが大切です。
復帰を待つだけではなく、「この時間は未来のために心と体を整えるプロセスだ」と意味づけられるよう、指導者の言葉が必要です。
声かけ例
- 「この時間は無駄じゃない。君の体と心を次のレベルに作り直す時間なんだ」
- 「焦らず進んでいること自体が、次のステージにつながっているよ」
2. サッカー以外の“支え”を認める
怪我をした選手は「自分=サッカー」という狭いアイデンティティを揺さぶられます。
だからこそ、音楽、勉強、友人、趣味など、サッカー以外の支えを持つことを肯定してあげることが大切です。
声かけ例
- 「リハビリの合間に何してる?サッカー以外の時間を楽しむのも大事だぞ」
- 「サッカーだけじゃなくて、いろんな世界を知ることが君の強みになる」
3. メンタルの“支点”を整える
長期離脱中は、自己否定に陥りやすい時期です。そこで必要なのが「感謝」と「小さな喜び」を意識すること。
- 五感からの良い刺激(音楽、香り、好きな食事など)
- 日常の中でのセルフコンパッション(自分を責めずに労わる姿勢)
- 「今日できたこと」に目を向ける習慣
声かけ例
- 「今日できたことを一つ教えてくれる?」
- 「感謝できることを探す習慣を持つと、心が前向きになるよ」
4. チーム全体への配慮
怪我をした選手へのサポートは、本人だけでなくチーム全体への影響も考える必要があります。
- 仲間から孤立させない工夫
- 「今日の練習を横から見てコメントしてくれ」など役割を与える。
- リハビリ中でもチームの一員であることを実感させる。
- 復帰までの道のりを共有
- コーチが「彼は今こういう段階にいる」とチームに説明し、安心感を持たせる。
- チーム全員で「待ってるぞ」という空気をつくる。
チームへの声かけ例
- 「彼はリハビリを頑張っている。みんなで復帰を楽しみに待とう」
- 「怪我をした選手の支え合いはチームの力になる」
まとめ
怪我をした選手をただリハビリに送り出すのではなく、指導者ができるのは
「もう一度選手として戻ること」だけでなく、「一人の人として再起できる環境をつくること」
です。
サッカー人生の危機は、同時に“人間的成長のチャンス”でもあります。指導者の寄り添い方ひとつで、その選手の未来は大きく変わるのです。