「土を耕す」って、結局なにをするの?

― 声が出ないチームが変わった、ある問いかけの話 ―

前回の記事で、
「現場で頑張るだけでは、チームは育たない」
「草むしりだけでなく、土を耕す時間が必要」
という話を書きました。

…で、たぶんこう思った方も多いはずです。

で、その“土を耕す”って、具体的に何をするの?

今日は、その一例をご紹介します。


声が出ないチームで、コーチが悩んでいたこと

ある育成年代のチームでの話です。(名前は伏せますね)

そのチーム、技術も走力も悪くない。
でも、試合になるととにかく静か。

  • ミスしても誰も声をかけない
  • 流れが悪くなっても誰も修正しない
  • ベンチもピッチも、なんとなく重たい空気

コーチはずっと、

「もっと声を出せ」
「盛り上げろ」
「引っ張れ」

と言い続けていました。

でも、なかなか変わらない。

そこで私は、こんなことをキャプテンに聞いてみました。


私がキャプテンにしたのは、たった一つの問い

それは、とてもシンプルな問いでした。

「みんなが声を出すようになるには、どうしたらいいと思う?」

答えを教えるのではなく、
“考える役割”をキャプテンに渡したんです。

するとキャプテンは、こう言いました。

「一回、みんなに聞いてみます」


キャプテンがやったのは「指示」ではなく「ヒアリング」

次の練習から、キャプテンはチームメイトに聞き始めました。

  • なんで声が出ないと思う?
  • どんな声なら、かけやすいと思う?
  • 声出すの、正直ちょっと恥ずかしくない?

すると出てきたのは、

  • 何を言えばいいか分からない
  • 間違ったこと言うのが怖い
  • 怒られるなら黙ってた方が楽

そんな本音でした。

これ、コーチが上から見ているだけでは
なかなか見えてこない部分です。


そこから起きた、小さな変化

話し合いの中で、チームはこんなことを決めました。

  • ミスした時は「ドンマイ」だけでも言う
  • 指示じゃなくて「次いこう」でOK
  • 完璧な声じゃなくていい

すると不思議なことに、
少しずつ声が増えていったんです。

最初はぎこちなく、
正直ちょっと照れくさそうに。

でも、確実にチームの空気は変わっていきました。


そして、その年の新人戦で…

そのチーム、最終的に
新人戦で15年ぶりの優勝をしました。

もちろん、

  • 技術の成長
  • フィジカル
  • 戦術

いろんな要因が重なっています。
「声を出すようになったから勝った」
なんて単純な話ではありません。

でも、間違いなく言えるのは、

チームが
「誰かにやらされて動く集団」から
「自分たちで考えて動く集団」に変わった。

その転換点に、
この“問いかけ”と“対話の時間”があった、ということです。


これが「土を耕す」ということ

この場面で起きていたのは、

  • 練習メニューを変えたわけでも
  • 走る量を増やしたわけでも
  • 声出せと怒鳴ったわけでもありません

やったのは、

  • 問いを投げる
  • 考える役割を渡す
  • 本音が出る場をつくる

たったそれだけ。

でもこれが、
チームの“土壌”を変えたんです。


コーチが全部やらなくても、チームは育つ

この話で、私が一番大事だと思っているのはここです。

チームが変わったのは、
キャプテンと選手たちが動いたから。

コーチや私が前に立って
全部引っ張ったわけではありません。

つまり、

コーチが頑張り続けなくても、
チームは自分たちで育ち始める

そんな瞬間が、確かにあったんです。


まとめ:土を耕すとは、問いを渡すこと

「土を耕す」とは、

  • 正解を教えることではなく
  • 指示を出すことでもなく

考えるきっかけを渡すこと。

そして、
考えたことを言葉にできる場をつくること。

現場で頑張ることも大切。
でも、それと同じくらい、

  • 問いを投げる
  • 任せる
  • 見守る

そんな関わり方が、
チームを静かに、でも確実に強くしていきます。

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