「子どもたちの心に火をつける関わり方」〜あるコーチングセッションからの学び〜
先日、ある小学生サッカーチームのコーチ陣とのグループセッション( DAY3)を実施しました。テーマは「行動指針を言語化する」。その場には、日々子どもたちと向き合いながら悩み、工夫を続けているコーチの皆さんが参加してくれました。
その中から、特に印象的だったいくつかのエピソードをご紹介します。
①「挨拶が変わった」その裏側にあったチームの取り組み
あるコーチが、チームで「挨拶を大切にしよう」と決めたことをきっかけに、子どもたちの様子が明らかに変わったと報告してくれました。積極的に声を出す子もいれば、まだ小さな声の子もいますが、「できるようになってきた」という実感があるとのこと。
この“日常のしつけ”のように見える行為こそが、実は将来の人格形成の土台になります。高校・大学になってからでは遅い。「小学生のうちに挨拶が“当たり前”になることがどれだけ大事か」を皆で共有する時間になりました。
②「言える・拍手される・笑顔になる」ミーティングの力
また別のコーチは、「ミーティングの場で子どもたち一人ひとりに“次がんばること”を言ってもらう」習慣を取り入れたそうです。発表後に全員で拍手するルールにしたところ、空気が柔らかくなり、自然と手を叩く子も増えていったとのこと。
ここで起きているのは「承認による所属感」。子どもが「ここにいていい」「自分の思いを言っていい」と感じられる空間づくりの一歩です。
③「言われなくても動く子」から「任せて見守る指導者」へ
あるコーチは、これまで試合前の準備や移動など、つい先回りして子どもに指示していた場面で、「自分たちで考え、動く」機会をあえて作るようにしたそうです。
もちろん忘れ物もある。でも、そこで「なんで持ってこなかったの!」ではなく、「いつ気づくかな?」と見守る。これは“勇気ある放任”とも言える姿勢で、子どもの主体性を引き出す土壌となります。
④裏方を担う“あの子”のこと
セッション終盤、「いつも同じ子が準備をしてくれるけど、それでいいのか?」という問いが出ました。そこには、「その子の良さを活かしたい」「でも、偏りすぎてないか」という葛藤があります。
私はこうお伝えしました。
「裏方として頑張ることは素晴らしい。でも、それを“当たり前”にせず、時には皆でやろうと投げかけることで、“思いやりの文化”が育ちます」
■まとめ:子どもたちに伝えたい「価値観」と「行動指針」
この日、参加したコーチそれぞれが自分の中にある「大切にしたい価値観」に向き合いました。そして、その価値観をどんな“行動”で子どもたちに伝えるかを考えました。
例えば…
- 【価値観】チームワークの大切さ
- 【行動指針】準備や片付けをみんなでやる。ありがとうを口にする。
- 【価値観】主体的に動くこと
- 【行動指針】自分で次の行動を考える時間を作る
こうした“言語化”は、自分自身の指導をより意識的に、ブレずに行う助けになります。
最後に
私は、ある経営者のコーチングもしています。その方は大きな会社を経営していますが、「心が満たされない」と言います。その根っこには「劣等感からの動機」があると感じています。
だからこそ、今小学生に関わる私たち指導者が「劣等感を動機にしない関わり」を実践する意味は、とても大きいのです。
子どもが「どんな自分でもここにいていい」と思える環境。そこにこそ、未来の幸せの種があります。