キャプテンを「注意係」にしない

前回の記事では、ある中学生キャプテンの葛藤から「安心と基準の両立」について書きました。

基準を上げたい。
でも仲間を置いていきたくない。

今回は、その続きです。

チームの基準を上げようとする時、よく起きることがあります。

それは、キャプテンが「注意係」になってしまうことです。

声を出すのもキャプテン。
注意するのもキャプテン。
雰囲気を締めるのもキャプテン。
ゆるんだ空気を戻すのもキャプテン。

一見すると、責任感のある良いキャプテンに見えます。

でも、この状態が続くと、キャプテンはかなり苦しくなります。

本当はチームを良くしたいだけなのに、仲間からは「また言ってる」と思われるかもしれない。
厳しく言えば空気が悪くなる。
言わなければ基準が下がる。

その間で、キャプテンは一人で悩みます。

キャプテンにも心があります。
そしてたぶん胃もあります。
胃にくるキャプテンも、きっといます。

キャプテンは管理者ではない

キャプテンの役割は、仲間を管理することではありません。

もちろん、必要な場面で声を出すことは大切です。
チームの空気がゆるんだ時に、基準へ戻す役割もあります。

ただ、それを一人で背負わせてしまうと、キャプテンは「仲間」ではなく「監視役」のようになってしまいます。

これはチームにとっても、あまり良い状態ではありません。

「キャプテンが言うからやる」
「注意されるからやる」

この形では、基準はなかなかチームのものになりません。

大切なのは、

「自分たちで決めたからやる」

に変えていくことです。

キャプテンが一人で正解を押しつけるのではなく、チームで基準を言葉にする。
ここが大事です。

「もっと本気で」は、まだ曖昧である

チームでよく使われる言葉があります。

「もっと本気でやろう」
「もっと声を出そう」
「もっと集中しよう」

どれも大切です。

でも、このままだと少し曖昧です。

たとえば「声を出そう」と言っても、選手によってイメージは違います。

大きな声で盛り上げることなのか。
近くの仲間に短く声をかけることなのか。
戦術的な指示を出すことなのか。
ミスした仲間を戻す声なのか。

ここが揃っていないと、同じ言葉を聞いていても行動はバラバラになります。

だから、基準は具体的な行動に落とす必要があります。

基準は、場面ごとに決める

たとえば、アップの基準。

集合時間はどうするのか。
準備は何分前までに終えるのか。
最初に誰がどんな声を出すのか。
表情や雰囲気をどう試合モードに変えていくのか。

たとえば、失点後に戻る声の基準。

「次の5分」
「まず一本つなごう」
「中央を締めよう」
「次の守備を合わせよう」

失点した後に何を言うかが決まっているだけで、選手は少し戻りやすくなります。

たとえば、練習濃度の基準。

ボールを拾う速さ。
移動のスピード。
待っている選手の関わり。
コーチの話を聞く姿勢。
ミスした後の次の行動。

こういう小さな行動に、チームの本気度は出ます。

たとえば、仲間への要求の基準。

ミスを責めるのではなく、次の行動を伝える。
要求する時は、具体的に伝える。
頑張っている仲間には、見ていることを言葉にする。
空気がゆるんだ時は、キャプテンだけでなく近くの人同士で声をかける。

こうして場面ごとに決めていくと、基準はキャプテンの個人的なこだわりではなく、チームの約束になります。

10分でも、チームは変わり始める

基準を言語化するというと、大げさなミーティングを想像するかもしれません。

でも、最初から長い話し合いをする必要はありません。

練習前の10分でもいいのです。

「今日のアップで大切にすることは何か」
「ミスした後に、どんな声をかけるか」
「練習がゆるんだ時、誰が何をするか」
「遠征中に、自分たちらしい振る舞いとは何か」

こうした問いを一つだけでも置いてみる。

そして、選手たちが出した言葉を、次の練習や試合で使ってみる。

うまくいかなければ、また直せばいい。

基準は、一度決めたら終わりではありません。
チームで育てていくものです。

指導者と保護者ができること

指導者にできることは、キャプテンに丸投げしないことです。

「お前がキャプテンなんだから、まとめろ」

この言葉は、使い方によってはキャプテンを孤独にします。

任せることは大切です。
でも、任せっぱなしにしないことも大切です。

指導者は、チームで基準を話し合う場をつくることができます。

キャプテンに全部言わせるのではなく、選手全員に考えさせる。
「うちのチームの基準は何か」を、自分たちの言葉にさせる。

それだけで、キャプテンの負担は少し減ります。

保護者も同じです。

キャプテンをしている子に、つい言いたくなるかもしれません。

「もっと言った方がいいよ」
「キャプテンなんだからしっかりしなさい」

その気持ちは自然です。

でも、その子はすでに十分背負っているかもしれません。

そんな時は、

「一人で背負いすぎていない?」
「一緒に考えてくれる仲間はいる?」
「チームで話す時間はある?」

と聞いてあげるだけでも、支えになります。

基準を一人に背負わせない

キャプテンを「注意係」にしない。

これは、キャプテンを甘やかすということではありません。

むしろ、チーム全体で基準に向き合うということです。

基準は、リーダー一人が背負うものではありません。
チームで言葉にし、行動に落とし、みんなで育てるものです。

キャプテンの役割は、仲間を管理することではない。
チームが自分たちの基準を考えるきっかけをつくることです。

あなたのチームでは、基準を誰が背負っていますか。

キャプテン一人でしょうか。
指導者一人でしょうか。
それとも、チーム全員の言葉になっているでしょうか。

基準を一人に背負わせず、みんなで言葉にしていくこと。

そこに、キャプテンを孤独にしないチームづくりの第一歩があるのだと思います。

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