メンタルコーチを続けていると、「鈍感力」が必要になる
メンタルコーチという仕事をしていると、
自然と感覚のセンサーが鋭くなっていきます。
相手のちょっとした表情。
声のトーンの変化。
間の取り方や、言葉の選び方。
「あ、今ちょっと引っかかったな」
「何か言いたいこと、飲み込んだな」
そんなことが、
意識しなくても分かるようになってくる。
センサーが高いこと自体は、悪くない
これは、決して悪いことではありません。
むしろ、
- 相手に配慮できる
- 空気を壊さずに関われる
- 信頼関係を築きやすい
という意味では、
指導者やコーチにとって大きな強みです。
ただし、問題はここからです。
センサーが高すぎると、エネルギーを奪われる
感覚が鋭くなると、
無意識のうちに、こんなことを考えるようになります。
- 今の表情、どういう意味だったんだろう
- さっきの一言、気に障ったかな
- 本当はどう思っていたんだろう
これをやり始めると、
相手の内面を勝手に推測するループに入ります。
そしてこのループ、
気づかないうちに
かなりのエネルギーを使っています。
問題は「優しさ」ではなく「配分」
ここで勘違いしやすいのが、
「気にしないようにしなきゃ」
「もっと強くならなきゃ」
という方向に行ってしまうこと。
でも本質は、そこじゃない。
問題は、
自分がコントロールできない領域に、エネルギーを使いすぎていることです。
相手がどう感じたか。
相手が何を考えているか。
これは、
こちらではコントロールできません。
だから必要になる「鈍感力」
ここで言う鈍感力とは、
- 何も感じないこと
- 察しないこと
- 無神経になること
ではありません。
感じた上で、そこに留まらない力です。
「あ、今ちょっと気になったな」
→ 以上。終わり。
そこから先の
「だから相手はこう思っていて…」
という想像の物語に、
入っていかない。
自分がやるべき場所に、エネルギーを戻す
センサーが反応したら、
次にやることはシンプルです。
- 今、自分が集中すべきことは何か
- 自分が本来使うべきエネルギーはどこか
そこに、意識を戻す。
鈍感力とは、
エネルギーの使い道を、自分で決める力とも言えます。
指導者・コーチにとっての「成熟」
若い頃は、
気づかないことが多かった。
経験を積むと、
いろいろ見えるようになる。
そして次の段階で必要になるのが、
見えたものを、全部拾わない力です。
これは、
鈍くなることではありません。
成熟です。
最近、やたら疲れる指導者へ
もし最近、
- 人の反応に振り回される
- 些細なことで頭がいっぱいになる
- 以前より疲れやすい
そんな感覚があるなら、
それは能力が落ちたからじゃない。
感度が上がった結果です。
だからこそ、
次に育てるべきは、鈍感力。
感じる力と、手放す力。
その両方が揃って、
初めてリソースフルな状態は保てます。
