【第2回】実践編:価値観を基盤にした未来像を描く
「一番嬉しかった瞬間」を思い出すワーク
セルフイメージを変えるには、ただ「こうなりたい」と願うだけでは不十分です。
その土台になるのが「自分の価値観」。
今回のワークでは、まず選手たちに 「サッカーで一番嬉しかった瞬間」 を思い出してもらいました。
相手チーム、試合の状況、観客の反応、そして自分の感情まで鮮明に思い出すことで、その奥にある価値観が見えてきます。
選手たちの具体例
ワークを通して出てきたのは、それぞれ異なる価値観でした。
- 審判を始めた学生
ゴール前で仲間が全力で戦う姿を間近で見られることに「ワクワク」を感じる。
→ 価値観は「真剣勝負を目撃すること」「仲間と共に戦うこと」。 - ある選手のケース
優勝がかかった試合で先制点を決め、仲間や先輩と喜びを分かち合った瞬間が最高だった。
→ 価値観は「仲間との一体感」「大切な人への貢献」。 - PKを任された選手
勝敗を決する場面でシュートを決め、チームに直接貢献できたことに大きな喜びを感じた。
→ 価値観は「勝利に直結するプレー」「信頼されること」。
こうして見えてくるのは、選手一人ひとりの価値観の違いです。
だからこそ「未来像」もそれぞれ違っていていいのです。
価値観と未来像をつなげる
指導者にとって重要なのは、選手が自分の価値観を未来のセルフイメージにつなげられるように導くことです。
- 「仲間との一体感」が大事な選手には、将来も仲間と喜びを分かち合うイメージを描いてもらう。
- 「真剣勝負のワクワク」を大切にする審判志望の学生には、トップリーグで仲間と共にピッチに立つ未来を描いてもらう。
- 「勝利に直結するプレー」に価値を置く選手には、大舞台で決定的な役割を担う姿をイメージしてもらう。
このように 価値観と未来像が結びつくと、セルフイメージはより強固になり、行動のモチベーションも高まります。
チーム全体への応用
さらに、個々の価値観をチーム全体の価値観と重ね合わせると効果が倍増します。
例えば「仲間を信じる」「共に挑戦する」という価値観を共有できれば、チームに 共同体感覚 が生まれます。これはアドラー心理学で言う「自己受容・他者信頼・他者貢献」が重なった幸福感の源泉です。
チームに共同体感覚が育てば、セルフイメージの変化は個人だけでなく組織全体に波及します。
指導者へのヒント
- 選手に問いかけるときは「どんな結果を出したい?」ではなく「どんな瞬間に喜びを感じた?」から始める。
- 個々の価値観を見極め、それを尊重した未来像を描いてもらう。
- チームの価値観と選手個人の価値観を重ね合わせることで、組織力を高める。
まとめ
セルフイメージを変えるカギは「価値観」と「未来像」のリンクにあります。
選手にとって大切な価値観を引き出し、それを未来の姿に重ねることで、行動は自然と理想へと近づいていきます。
そして、指導者がその価値観をチーム全体に広げる工夫をすれば、個人と組織が同じ方向を向き、より大きな成果につながります。