問題は“技術”より“視野”だった
あるサッカー選手が、ここ最近の自身のプレーに違和感を覚えはじめました。「以前は自然にできていたことが、今はなんだかうまくいかない」──そんな漠然とした感覚から、自分の課題と真剣に向き合うようになりました。
◆ 問題は“技術”より“視野”だった
この選手が注目したのは、「技術力の不足」ではなく、「見えていない」こと。試合中に周囲の状況を正確に把握できず、判断が遅れてしまう。ところがある実験では、視野が確保されれば的確な判断ができていたことが判明。問題の本質は“判断力”ではなく、“認知のタイミング”にあると気づいたのです。
◆ 指導者にとっての示唆:「見えていない」の裏にある要因
多くの指導者が「判断ミス」と見なすプレーには、実はその前段階である「認知の質」が関わっていることがよくあります。選手が早くポジションを取れているか、余裕を持って周囲を観察できているか。その“前準備”が適切に行われていなければ、判断以前に選択肢が見えなくなります。
➡ 指導のポイント:
- 認知→判断→行動の流れを整理し、それぞれにアプローチを分ける
- 「判断ミス」の指摘だけでなく、「なぜその選択肢しか見えていなかったのか」を掘り下げる
◆ 自信を失った時、何を軸にするか?
この選手は、試合で思うような成果を出せずに、自信が揺らぎ始めていました。ですが、守備面では明確に手応えを感じており、一対一の対応力が向上していることに気づいていました。ネガティブな感情に流されず、今できていることを客観的に見る力──それこそが「メンタルの土台」になります。
➡ 選手へのメッセージ:
- 「うまくいかない自分」に焦点を当てすぎず、「今できていること」を積極的に意識しよう
- 自信とは「成果」ではなく「準備と成長」の上に築かれるもの
◆ 攻撃力の課題と改善への工夫
ポジション的に「ゲームを締める役割」を担うことの多いこの選手は、「もっと上手くなければ先発では使われない」と感じています。しかし、彼は攻撃面でのスキルを「ミスをしないプレーヤーになること」「ボールを確実に届けること」と細かく定義し、今後の練習で意識して取り組んでいます。
➡ 成長の鍵:
- 「具体的な理想像」を持ち、そのために必要なスキルを細分化する
- イメージトレーニングや試合映像から“ベターな選択肢”を学び、日々の練習に落とし込む
まとめ:不調はチャンス、成長は自覚から始まる
調子が落ちたと感じる時こそ、選手は一段階成長できるチャンスです。漠然とした不調を「認知の質」「判断の精度」「体の感覚」といった要素に分解し、自ら改善の道筋を見出していく姿勢は、全ての選手にとって参考になります。
そして、指導者にとっても「表面的な結果」だけではなく、「その背景にあるプロセス」への理解とサポートが重要です。選手の“見えない課題”に気づく視点を持つことで、より効果的な育成が実現できるでしょう。