“大きな声”は気合いじゃない。自分を守る心理スキルだった
「もっと声出せ!」
サッカーをやってきた人なら、一度は言われたことがある言葉だと思います。
正直に言うと、
私はこの言葉、あまり好きじゃありません(笑)。
なぜなら、
声が出ない選手=やる気がない
声が小さい選手=メンタルが弱い
そんなふうに誤解されやすいからです。
でも最近、ある高1の選手とのセッションで、
「声を出すことの本当の意味」を、あらためて教えられました。
いじられて困っている選手は、実は多い
今回紹介するのは、A君。
高校からサッカーを始めた、まじめで優しいタイプの選手です。
技術がどうこう以前に、
・上下関係
・ちょっとしたいじり
・人間関係の距離感
こういったところで、少しずつ萎縮してしまっていました。
ここで大事なのは、
彼が弱かったわけでも、メンタルが脆かったわけでもない
という点です。
実際、同じような悩みを抱えている選手は、かなり多い。
特に
- 高1
- 競技歴が浅い
- まじめで空気を読む
このタイプは、無意識に「標的」にされやすい構造があります。
いじりは「強さ」じゃなく「不安」から生まれる
ここで少し心理学の話をします。
アドラー心理学や社会心理学では、
人を攻撃したり、いじったりする行動の背景に
「劣等感」や「不安」があると考えます。
・自分の立ち位置を確認したい
・優位に立って安心したい
・弱そうな相手を見つけるとホッとする
…残念ですが、人はそんな生き物です。
そしてもう一つ重要なのが
反応が小さい人は「安全な相手」と認識されやすい
ということ。
これは性格の問題ではなく
コミュニケーション上の“構造”の話です。
声を出すと、何が変わるのか?
ここで出てくるのが「声」です。
A君に提案したのは、
「無理に明るくなろう」でも
「気合いを入れよう」でもありません。
ただ一つ。
練習中、ポジティブな言葉を“少し大きめの声”で出してみる。
「やろう」
「ナイス」
「ドンマイ」
たったそれだけです。
すると何が起きるか。
- 周囲に
「この人は、ここにちゃんと参加している」
というサインが伝わる - 存在が“曖昧”でなくなる
- 心理的な境界線(バウンダリー)ができる
結果として、
いじられにくくなることが多い。
これ、根性論ではありません。
非言語コミュニケーションと社会的存在感の話です。
声は「武器」じゃなく「バリア」
ここで誤解してほしくないのは、
「声を出せば強くなる」
「これでいじめはなくなる」
そんな単純な話ではない、ということ。
声出しは、
相手を黙らせるための武器ではなく
自分を守るためのバリアです。
A君にも、こんなふうに伝えました。
「合えば使えばいいし、
しんどい日はやらなくてもいい。
これは“実験”だからね」
すると彼は、
「気持ちが少し明るくなりました」
と笑ってくれました。
この笑顔が出た時点で、
もう十分なんです。
メンタルは「鍛える」より「守る」
メンタルコーチとして、最近よく思うのは、
メンタルは
強くするものじゃなく、壊れないように守るもの
だということ。
無理に性格を変えなくていい。
無理に前向きにならなくていい。
ただ、
「自分を守る選択肢を一つ持つ」
それだけで、選手はずいぶん楽になります。
最後に
もし今、
- ちょっといじられて困っている
- 人間関係で気を遣いすぎている
- 声を出すのが苦手で悩んでいる
そんな選手がいたら
「気合いで声を出せ」ではなく
「声は、自分を守るスキルかもしれないよ」
そんなふうに伝えてあげてください。
大声を出さなくてもいい。
ヒーローにならなくてもいい。
ちゃんと“ここにいる”と伝えられれば、それで十分です。
