技術指導の前に、指導者が整えておきたい「選手の心の状態」
育成年代のトップレベル環境で、複数の選手と個別に対話する機会がありました。
ポジションも学年も違いますが、共通して見えてきたものがあります。
それは、
技術の差よりも、「心の状態の差」がパフォーマンスに直結しているという現実です。
なぜ「できるはずのプレー」が試合で出ないのか
指導現場で、こんな経験はないでしょうか。
- 練習ではできているのに、試合になると消極的になる
- ミスをきっかけに、その後のプレーが小さくなる
- 判断が遅れ、無難な選択ばかりになる
このとき、私たちはつい
「集中力が足りない」
「メンタルが弱い」
と捉えがちです。
しかし、選手本人の内側では、もっとシンプルなことが起きています。
ミスした瞬間に、心が一気に“守り”に入っているのです。
心がアンリソースフルになると起きること
不安や緊張が強くなると、人は無意識に
- 視野が狭くなる
- 身体が硬くなる
- 情報処理が遅くなる
これは「気合」や「根性」の問題ではありません。
脳と自律神経の自然な反応です。
この状態(アンリソースフル)に入っている選手に、
さらに技術的な修正や指示を重ねても、
かえってプレーは不安定になります。
セッションで最初にやったことは「直さない」こと
選手との対話で、最初に行ったのは
「ミスをなくそう」という話ではありませんでした。
むしろ意識したのは、
- 今どんな気持ちでプレーしているかを言語化する
- ネガティブな感情を否定しない
- 「そう感じている自分」をそのまま認める
という、ごく基本的なことです。
すると、
- 切り替えが早くなる
- 判断が安定する
- 周囲を見る余裕が戻る
こうした変化が、自然に起こり始めます。
指導者ができる、たった一つの大切な関わり
ここで大事なのは、
**指導者が選手の感情を「どう扱っているか」**です。
ミスした選手に対して、
- すぐに修正点を伝える
- 表情や態度で不満を示す
- 「次はミスするな」という空気を出す
これらは無意識でも、選手の心を一気にアンリソースフルにします。
一方で、
- 「今、何が起きてたと思う?」と問いかける
- 感情を受け止めた上で視点を整理する
- 結果ではなく状態に目を向ける
こうした関わりは、
選手が自分で立て直す力を育てていきます。
結果は「心の状態」のあとについてくる
安定したパフォーマンスを発揮する選手ほど、
結果を追いすぎていません。
彼らは、
- ミスした自分を過剰に否定しない
- 状態を整えることを優先する
- 日常の習慣を大切にしている
結果は、
**心の状態と日々の積み重ねの“副産物”**として現れてきます。
指導者として、問い直してみたいこと
もし今、
- 選手が伸び悩んでいる
- 試合で力を出しきれない
- 技術指導が空回りしている
と感じるなら、ぜひ一度、こう問いかけてみてください。
「この選手は今、リソースフルな状態でプレーできているだろうか?」
技術指導の前に、
選手が“自分の力を使える状態”かどうかを見る視点。
それを持つだけで、
指導の質も、選手の反応も、確実に変わっていきます。
