練習は元気。でも試合が怖い
——怪我と評価が重なったとき、選手の心に何が起きているのか?
「練習では一生懸命やっているのに、
試合になると急に消極的になる選手」
そんな姿に、心当たりのある指導者の方も多いのではないでしょうか。
先日、あるサッカー選手と個人セッションを行いました。
本人はこう話してくれました。
- 練習は楽しい
- でも試合は正直、出るのが怖い
- 監督やコーチの一言が、何日も頭から離れない
- 怪我が続き、自信が持てなくなっている
この選手は、いわゆる「3年生 × 怪我 × 評価への過敏さ」が重なった状態でした。
この組み合わせは、育成年代・大学年代を問わず、
メンタルが大きく揺れやすい“典型パターン”でもあります。
怪我が続くと、心は「静かに削られていく」
この選手は、長期間にわたって怪我を繰り返していました。
怪我そのものよりも、実はもっと大きいのは、
- 「また痛めたらどうしよう」
- 「評価が下がっているのでは」
- 「取り返そうとして空回りする」
こうした“頭の中の不安”が、プレーの自由を奪っていくことです。
すると選手は次第に、
- 思い切ったプレーができなくなる
- 指示に過敏になる
- ミスのあと切り替えられなくなる
という悪循環に入っていきます。
心・体・習慣は「三層構造」になっている
この選手には、次のような整理をしていきました。
- 心の層:自己イメージ・他者評価・不安
- 体の層:怪我・痛み・身体感覚
- 習慣の層:切り替え・言語化・日常の整え方
現場では、どうしても
「技術」「戦術」「フィジカル」に目が向きやすいですが、
メンタルはこの三層が連動して崩れるのが特徴です。
だからこそ、
心だけを変えようとしても上手くいかず、
体だけを鍛えても安定しない、
ということがよく起こります。
実際に起きた小さな変化
この選手には、
- 試合前の不安を“我慢しないで言葉にする”
- ミスのあとに「評価」ではなく「事実」に戻る
- 日常生活のリズムと環境を整える
こうしたとても小さな習慣から整えていきました。
すると次第に、
- ミス後の切り替えが早くなる
- 表情が硬くならなくなる
- 試合中に自分の感情を把握できるようになる
小さな変化ですが、プレーの安定感は確実に変わっていきます。
指導者の皆さんに、ひとつだけお伝えしたいこと
選手が
- 消極的になるとき
- 自信を失っているとき
- 試合を怖がるとき
多くの場合、
「気合が足りない」のではなく、
「自己イメージが揺らいでいる」だけというケースがとても多いです。
そんなとき、技術的な指摘の前に、
ぜひこう問いかけてみてください。
「今、一番不安なことって何?」
この一言だけで、
選手の心の緊張がふっと緩むことがあります。
まとめ
- 怪我 × 学年 × 評価への過敏さは、メンタルが最も揺れやすい時期
- メンタルは「心・体・習慣」の三層構造でできている
- 大きな変化は、小さな整えから始まる
- 指導の第一歩は「修正」ではなく「理解」
選手は、
「技術よりも先に、安心してプレーできる心が必要な時」があります。
そのタイミングを見極めることこそ、
今の時代の指導者に求められている力なのかもしれません。
