「チームが揺らぐ時、指導者にできること」~関係性・言葉・信頼をめぐる現場からの学び
はじめに
シーズン終盤、チームが大きな目標(全国大会など)に向かって進む中で、見えにくくなる“心のほころび”がある。
それは、プレーではなく、関係性や言葉、信頼の温度に宿っている。今回は、あるチームのコーチング現場から得られた気づきを共有したい。
1|成果の裏側に潜む「チームの疲れ」
チームはリーグ戦で優勝を果たし、次の大舞台に向けて順調に準備を進めていた。
しかし、表面の成果とは裏腹に、内部には“静かな疲れ”が広がっていた。
- スタッフ同士のぎこちなさ
- キャプテンの「何かが足りない」という感覚
- コーチ間の温度差
これらはプレーには現れにくいが、選手・スタッフの感情には確実に影響を及ぼす。
2|感情の乱れは「コントロールできないこと」から始まる
人は、自分でコントロールできない事象に意識が向くと、無意識にエネルギーを消耗していく。
指導者自身がこの“アンリソースフル状態(=資源が枯渇した思考状態)”に陥ることも珍しくない。
大切なのは、「自分は今どこに意識を向けているか?」を俯瞰し、言語化を通して“戻る場所”を取り戻すこと。
このプロセスを伴走できる存在が、指導現場には必要だ。
3|コーチングのズレは「言葉」と「価値観」に表れる
プレー改善を提案したヘッドコーチの声が、指導陣にうまく届かなかったケースがあった。
選手は「全体が見える形でやりたい」と望んだが、コーチ側には別の意図があった。
結果、摩擦が生まれ、ヘッドコーチには「言うことを聞いてもらえなかった」という印象が残る。
この背景には、コーチングスタイルにおける“価値観のズレ”が潜んでいた。
- 選手の納得を重視するか
- 指導者の権威を重視するか
特にカテゴリーが上がるほどでは、“言葉の質”が選手の信頼度に直結する。
4|「伝える」は“タイミング”と“伝え方”がすべて
信頼を築くためには、「何を言うか」以上に、「いつ、どう伝えるか」が問われる。
あるコーチは、グループLINEと個別連絡の使い分けについて悩んでいた。
一斉に伝えた方が公平だが、個別対応の方が効果的な場面もある。
言葉には「重さ」があり、同じメッセージでも届き方が変わる。
5|コーチのモヤモヤは「過去の記憶」ともつながっている
指導に対する納得感の欠如は、現在の指導者との問題だけではないことがある。
過去に経験した指導との“嫌な記憶”が、今の感情に影響していることもあるのだ。
だからこそ、選手が感情を整理し、自分の中で納得できるプロセスを提供することが、コーチの役割でもある。
6|セッション後の変化:「気づく → 整理する → 戻れる」
この日のセッションでは、感情が絡まり合っていたヘッドコーチが、会話を通じて少しずつ自己理解を深め、リソースフルな状態に戻っていった。
それは、「考え方を教えた」というより、“思考の地図を一緒にたどった”ようなプロセスだった。
おわりに:指導とは“伝える”ではなく“届かせる”こと
技術や戦術の指導だけでなく、「どう伝えるか」「何を感じ取っているか」を深く見つめ直すこと。
そこに、選手の自立を促すヒントがある。
今の時代のコーチングに必要なのは、“教える力”よりも“寄り添う力”かもしれない。
選手の声なき声に耳を澄ませながら、次の一歩を共に探していこう。
📩 無料メルマガのご案内
「選手の主体性を伸ばす無料メルマガ」では、
✔ 日々の指導に使える“問いかけのコツ”
✔ チームを成長させる“対話のヒント”
を毎週お届けしています。
👉 登録はこちら:https://1b0e527676e.benchmarkpages.com/nishida-merumaga
📕 電子書籍のご紹介
①『選手が自ら考え、やる気に満ちる! サッカー指導者のためのメンタルコーチング』
👉 https://www.amazon.co.jp/dp/B0FVWJRPXD
②『ゾーンに入る習慣力』
👉 https://tinyurl.com/5c89frb5
